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TARFとは:コイン投げのたとえ話でざっくり理解

通貨オプションを組み込んだ、複雑な為替系デリバティブで有名なものにTARF(ターフ)がある。FX TARFとも呼ぶ。これはTarget Redemption Forward(ターゲットリデンプションフォワード)の略で、商品性は、正確ではないが、ざっくりとしたイメージは次のような感じだ。

  • コインを投げてが出れば、銀行が顧客に100万円支払う。
  • が出れば、顧客が銀行に200万円支払う。
  • これを10回繰り返す。
  • ただし、表が累積で5回出たら、そこで取引を終了する

もちろん、実際にはコイン投げではなく、将来の為替レートが行使レートを上回るかどうかで判定する

よくあるのは、ドル円が円安に行くと顧客が受け取り、円高に行くと顧客がその2倍を支払う、というようなものだ。

為替レートと行使レートの差を累積していき、所定のレートを超えたら取引を早期終了する(その後はドルと円の交換は行われない)。

銀行としては顧客に払う総額の上限が低く決まっている(銀行が5回負けたら早期終了する)。これに対して、顧客としては、最悪全部負け続ければ10回負けることになる(顧客が5回負けても取引続行されるので、満期まで負け続ける可能性がある)。しかも、一回の受け払いでは、顧客の支払額にレバレッジがかかっており、負けたときの損失は明らかに顧客の方が大きい(銀行が負けたら一回につき100万円支払うが、顧客が負けたら一回につき200万円支払わないといけない)。

取引条件の例

より実際の取引に近い例は、

  • 3月、6月、9月、12月のスポット末日に
  • 1,000万円を支払い、10万ドルを受け取る(交換レート100円/ドル)
  • これを5年間繰り返す(20回受け払いする)
  • ただし交換日の10営業日前に観測された為替レートが交換レートを超えていれば、為替レートと交換レートの差分を累積値に加える
  • 累積値が20を超えたらそれ以降の交換は行わず、契約が早期終了する(ターゲットノックアウト条項)

という感じである。

どの満期においても為替予約の交換レートは一定(100円/ドル)になっている契約である(このような契約をフラット為替クーポンスワップと呼ぶ)。
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20個の為替予約をひとまとめにして、その全体にターゲットノックアウト条項が付いている。予約レートより円安に行った場合は、何円だけ円安に行ったかを累積していき、累積値が所定の値を超えたらそこで早期終了となる。

市場実勢が円安に行ってくれたほうが、支払う円の金額が市場実勢よりも安く済むため、TARFの買い手にとってお得である。しかし、予約レートよりも円安の状態が続くと、ターゲットノックアウト条項にヒットして契約自体が早期終了してしまう。

このように、ターゲットノックアウト条項は、TARFの買い手にとってのメリットを打ち消すものであり、不利な条項なので、そのデメリットを打ち消すだけのメリットを与えるために、予約レートは買い手にとって有利なレートにすることができる

ここで、ターフは名前に「フォワード」が付いているが、正確には、顧客の支払額にレバレッジがあるので、フォワードにはなっていない
もしレバレッジがなければ、顧客から見てコールオプションの買いとプットオプションの売りが同額になっていることから、実質的にフォワードと同じ、つまりシンセティックフォワードになる
【為替デリバティブ】シンセティックフォワードとは(マルチシンセティックフォワードとは)【オプションを使うメリット】 | Quant College
それに対して、ターフのようにレバレッジが付いているフォワードのことをレシオフォワードと呼ぶことがある。
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参考文献

FX Barrier Options: A Comprehensive Guide for Industry Quants (Applied Quantitative Finance) (English Edition)

FX Options and Structured Products (The Wiley Finance Series) (English Edition)

Foreign Exchange Option Pricing: A Practitioner’s Guide (The Wiley Finance Series Book 626) (English Edition)

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