為替予約レートの決まり方/計算方法

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為替予約レートの決め方

為替予約レートとは、為替予約を取引する際に決める取引条件である。予約レートともいう。将来の外貨キャッシュフローに適用される為替レートを、この予約レートで事前に固定化することができる。

取引する際に予約レートがどう決まるかというと、

  • 市場実勢の為替フォワードレートをもとに、
  • 金融機関の取り分(対顧ざや)を足し引きする、

ことによって決まる。

まず市場実勢の為替フォワードレートは、為替フォワードのマーケットでクォートされている為替レートであり、先物為替レートとも呼ぶ。「いま為替予約をやると、目安としてこれくらいの予約レートになります」という為替レートである。これは金融機関の間(インターバンク)でトレードされている為替予約の予約レートが、いまどれくらいの水準になっているか、を表す。

次に金融機関の取り分(対顧ざや)は、顧客と取引する際の手数料のようなものである。

例えば、顧客のドル買い円売りであれば、金融機関はドル売り円買いなので、予約レートは高く設定する。予約レートを\(K\)、将来の為替レートを\(S\)、ドル元本を\(P\)とすると、金融機関のペイオフは\((K – S)P\)だから、\(K\)が高いほど取り分は多くなる

逆に、顧客のドル売り円買いであれば、金融機関はドル買い円売りなので、予約レートは低く設定する。予約レートを\(K\)、将来の為替レートを\(S\)、ドル元本を\(P\)とすると、金融機関のペイオフは\((S – K)P\)だから、\(K\)が低いほど取り分は多くなる

為替フォワードレートの計算方法・構成成分

予約レートは市場実勢の為替フォワードレートをもとに、金融機関の取り分を考慮して決まる。では市場実勢の為替フォワードレートはどのように決まっているのか

これは結局のところ、為替フォワード市場の需要と供給によって決まっている、としか言いようがない。しかし理論的には次のように決まることが知られている。

$$F = S e^{(r_{domestic} – r_{foreign})T} = S \frac{D_{foreign}(T)}{D_{domestic}(T)}$$

  • \(F\)は為替フォワードレート(先物為替レート)
  • \(S\)は為替スポットレート(直物為替レート)
  • \(r_{domestic}\)は国内通貨の金利(USD/JPYなら円金利、EUR/USDならドル金利)
  • \(r_{foreign}\)は外国通貨の金利(USD/JPYならドル金利、EUR/USDならユーロ金利)
  • \(T\)は為替フォワードの満期までの期間
  • \(D_{foreign}(T)\)は満期に対応する外国通貨金利のディスカウントファクター
  • \(D_{domestic}(T)\)は満期に対応する国内通貨金利のディスカウントファクター

為替フォワードレートが2通貨の「金利差」から求まる、とよく言われるのは、上記の式で\( r_{domestic} – r_{foreign} \)が登場しているからである。

ここで重要なのは、金利やディスカウントファクターは担保通貨によって異なる(いわゆるマルチカーブの考え方)、ということである。したがって、上記の\(r\)や\(D\)は何らかの担保通貨で統一しないといけない。

具体的には例えば、\(r_{domestic}\)には円担保の円金利を使うが、\(r_{foreign}\)にはドル担保のドル金利を使う、というのはダメである。円担保の金利とドル担保の金利を混ぜて使っているからだ。

そうではなく、\(r_{domestic}\)にはドル担保の円金利を使い、\(r_{foreign}\)にはドル担保のドル金利を使う、というように担保通貨を統一しないといけない。もちろん円担保にそろえてもいいが、為替市場ではドルを基準に考えるのが一般的であり、ドル担保にそろえることになる。

なお実務上は、為替フォワードレートは担保通貨によらずに一定であると仮定することが多い。すなわち、円担保の(金利またはディスカウントファクターから求めた)為替フォワードレートは、ドル担保の為替フォワードレートに一致する、と仮定する。その結果、以下の2つは等しくなる。

  • 円担保の円金利と、円担保のドル金利から求めた為替フォワードレート
  • ドル担保の円金利と、ドル担保のドル金利から求めた為替フォワードレート

よってこの場合、結果的にはどの担保通貨にそろえても結果は変わらない。決めの問題にはなるが、市場ではあくまでドル担保にそろえて求めた為替フォワードレートを真っ先に求めることになる。

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