目次
こちらもおすすめ
計算演習 確率解析(ブラウン運動編その1)をリリースしました。 | Quant College
LIBOR廃止とRFR移行のまとめ | Quant College
LIBOR廃止とRFR移行のまとめ(後編)をリリースしました。 | Quant College
新作note『CVA入門』をリリースしました。 | Quant College
【初心者向け】CVAモデルの体系的まとめ | Quant College
金融工学・デリバティブの独学におすすめのわかりやすい本・教科書:初心者向けの16冊 | Quant College
【感想あり】金利デリバティブを独学するのにおすすめの本:9冊を難易度順に紹介【マルチカーブ/マイナス金利】 | Quant College
金融工学関連でおすすめの本:まとめ(目次) | Quant College
通貨スワップと為替スワップについて改めて確認してみる
本記事の内容は以下の通り。
- 通貨スワップと為替スワップの違い
- 為替スワップとは
- 通貨スワップとは
- 通貨スワップ協定とは
- 日韓通貨スワップ協定とは
通貨スワップと為替スワップの違い
基本的な話になるが、通貨スワップと為替スワップの違いは以下の通り。
- 通貨スワップは満期までの間に定期的な金利交換もあるが、
為替スワップには金利交換はない - 満期時の元本交換に適用される為替レートとして、
通貨スワップでは契約時のスポット為替レートが適用されてしまうが、
為替スワップでは満期日に見合うフォワード為替レートが適用される - 通貨スワップは主に外貨金利リスクのヘッジに使うが、
為替スワップは為替リスクのヘッジに使う - 通貨スワップは1年以上や10年超など長期の取引が多いが、
為替スワップは1年未満の短期の取引が多い
為替スワップとは
まず為替スワップは、為替スポット取引と為替フォワード取引を合体させて1つにパッケージ化したものである。
【簡単にわかりやすく】為替スワップとは?スポット、フォワードとの違い | Quant College
例えば、
- スポット(2営業日後)で円を貸してドルを借りる(為替スポット取引)
- 6ヶ月後に円を返してもらってドルを返済する(為替フォワード取引)
というものであり、1つ目が為替スポット取引、2つ目が為替フォワード取引である。これら2つを合体させて1つにパッケージ化したものを為替スワップという。
- 為替スポット取引で用いる為替レートはスポット為替レートだが、
- 為替フォワード取引で用いる為替レートは取引ごとに決める。フォワード為替レートを用いるとフェアになるが、実際にはフォワード為替以外にも自由に取引ごとに決めることができ、これを予約レートやストライクレートということもある。
重要なのは、スポット取引で用いる為替レートと、フォワード取引で用いる為替レートが異なる、ということだ。
通貨スワップとは
次に通貨スワップは、この為替スワップに、異通貨間の金利スワップを加えたものだ。
通貨スワップ=為替スワップ+異通貨間の金利スワップ | Quant College
通貨スワップとは(クロスカレンシースワップとは)【仕組みを簡単にわかりやすく】 | Quant College
【簡単にわかりやすく】金利スワップとは | Quant College
例えば、
- スポット日(2営業日後)に円を貸してドルを借りる(為替スポット取引)
- 3ヶ月ごとに2回、ドルの変動金利と、円の変動金利足すスプレッドを交換する(異通貨の金利スワップ取引)
- 6ヶ月後に円を返してもらってドルを返済する(為替フォワード取引)
というものであり、2つ目が異通貨の金利スワップになっている。
1つ目と3つ目は為替スワップとほぼ同じだが、為替スワップと異なるのは、その構成要素であるスポット取引とフォワード取引はいずれも為替レートとしてスポット為替レートを用いる、という点だ。10年や20年といった長期の取引が多いのだが、その満期に行う元本交換で、為替レートとしてスポット為替を用いないといけないのである。為替スワップでは、フォワード為替レートをベースに予約レートを設定するが、通貨スワップでは問答無用でスポット為替レートが設定されてしまう。
これによって生じる為替リスクと、それに伴うカウンターパーティリスクを軽減するために、インターバンクではMark to Market条項を付けた、MtM通貨スワップがよく取引される。これは、3ヶ月ごとに通貨スワップをロールしていく(3か月間の契約が終了後、すぐに次の3か月間の新契約を開始する)もので、元本交換の為替リスクが3ヶ月に短縮される。
MtM通貨スワップとは | Quant College
以上、通貨スワップとして元本交換ありのものを考えたが、元本交換がないものもある。
- 元本交換なしで異通貨の変動金利を交換するのを通貨ベーシススワップ
- 元本交換なしで異通貨の固定金利を交換するのをクーポンスワップ
と呼ぶ。
【わかりやすく】ベーシススワップとは:3種類ある【ドル円ベーシス】 | Quant College
【わかりやすく】通貨ベーシススプレッドの仕組み・定義・コンベンション【ドル円ベーシススワップ】 | Quant College
【簡単にわかりやすく】クーポンスワップとは:仕組み、メリット、リスクは? | Quant College
通貨スワップ協定とは
各国の中央銀行(日本であれば日銀)の間で結ぶ協定で、自国の通貨下落が収まらない場合(通貨危機)に、自国通貨(日本であれば円)を預け入れるのと引き換えに、あらかじめ契約で定めた為替レートで、協定相手国の通貨(協定相手が米国であればドル)を融通してもらう協定である。
自国通貨を払って外国通貨を受け取るが、このときの自国通貨と外国通貨の比率(為替レート)は、その時点の為替レートではなく、通貨スワップ協定であらかじめ定めておいた為替レートが適用されるのがポイントである。
国家・政府の間での協定・条約ではなく、あくまで中央銀行間の協定であることに注意。
スワップ協定、通貨交換協定などとも呼ぶ。
末尾に付く「協定」を抜いて単に「通貨スワップ」という場合、通常はデリバティブ(金融派生商品)のひとつである、通貨スワップを指す(文脈によっては通貨スワップというだけで通貨スワップ協定のことを指す場合もある)。
デリバティブの通貨スワップについては以下の記事を参照。
【仕組みを簡単にわかりやすく】通貨スワップとは(クロスカレンシースワップとは) | Quant College
日韓通貨スワップ協定とは
通貨スワップ協定は、貿易の決済に必要な外貨の調達が困難な(調達しようと思えばできたとしても、調達コストが高すぎる)場合も想定しており、日本と韓国との通貨スワップ協定もそういうことだろう。
リーマンショックのような金融危機が北米や欧州などの経済大国で起こると、その影響は世界中に波及する。例えばアメリカで金融危機が起きると、アメリカの金融機関は自国通貨であるドルの現金を手元に確保しようとする。そのために外国に投資している資金を引き上げ、ドルに換えようとする。
外資系企業は韓国からも資金を引き上げることになるが、韓国は外貨(特に海外との決済で重要なのはドル)が不足し、貿易の決済が困難になる恐れがある。
日本と韓国の間では大規模な輸出入が行われており、日本は韓国に輸出する際、韓国から代金としてドルを受け取るが、韓国が外貨(ドル)不足に陥ると、日本は輸出の売上を回収できなくなる。
これでは日本も困るということで、通貨スワップ協定を結び、日本が韓国に外貨(ドル)を融通できるようにした、ということのようだ。
参考文献
FX Options and Structured Products (The Wiley Finance Series) (English Edition)
あわせて読みたい
通貨スワップ=為替スワップ+異通貨間の金利スワップ | Quant College
為替予約・先物為替・先物為替予約・為替先物・通貨先物の違い | Quant College
為替スワップポイントと通貨ベーシスの使い分け | Quant College
ドル円の為替フォワードから作る2種類のディスカウントファクター | Quant College
【解説:通貨ベーシスとは】通貨ベーシスのコンベンション | Quant College
通貨ベーシスを用いたイールドカーブ生成 | Quant College
【解説:通貨ベーシスとは】通貨ベーシスの直観的な意味合い | Quant College
こちらもおすすめ
計算演習 確率解析(ブラウン運動編その1)をリリースしました。 | Quant College
LIBOR廃止とRFR移行のまとめ | Quant College
LIBOR廃止とRFR移行のまとめ(後編)をリリースしました。 | Quant College
新作note『CVA入門』をリリースしました。 | Quant College
【初心者向け】CVAモデルの体系的まとめ | Quant College
金融工学・デリバティブの独学におすすめのわかりやすい本・教科書:初心者向けの16冊 | Quant College
【感想あり】金利デリバティブを独学するのにおすすめの本:9冊を難易度順に紹介【マルチカーブ/マイナス金利】 | Quant College