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参考文献
スワップ取引のすべて(第5版)金利スワップとは
金利スワップはInterest Rate Swap、略してIRSとも書かれる。最も有名なデリバティブ商品であり、現実に多額の金利スワップ取引が取引されている。取引当事者は金融機関のみならず中堅中小も含む事業法人に至るまで幅広い。
金利スワップで一般的なのは変動金利と固定金利を満期まで定期的に交換し続ける取引である。例えば満期10年、6カ月ごとに変動金利と固定金利を(合計で20回)交換する、などである。スワップ (swap) が、交換するという意味の単語である。変動金利とはLIBORやRFRなどの金利指標で定まる金利であり、市場環境によって変動する。固定金利は市場変動とは関係なく、金利スワップの契約時に一度決めたら満期まで一定となる金利である。
変動金利と固定金利の交換するタイプ以外にも、種類の違う変動金利どうしを交換するタイプの金利スワップもある(ベーシススワップと呼ぶ)。これはどちらかというとプロ向けのスワップであり、主に金融機関が取引する。
金利スワップの用途としては、変動金利を固定化する、固定金利を変動化する、のどちらかだが、固定化する用途が多く見受けられる。ローンや債券で変動金利を支払っている会社が、変動金利の受け・固定金利の払い、の金利スワップを行うことで、変動金利の支払いと受け取りが相殺され、実質的に固定金利の支払いになる。
上記で説明したのはシンプルな金利スワップで、プレーンバニラスワップと呼ばれるものだが、他にも取引条件をカスタマイズしたスワップ(プレーンバニラではないスワップ)が多数存在する。
- 金利交換のたびに、元本が減少していくスワップ(アモチスワップ)
- 金利交換のたびに、変動金利に上乗せされるスプレッドや、固定金利が変化するスワップ
- クーポンが変動金利と逆の動きをするスワップ(リバースフロータースワップ)
- クーポンがスワップレートを参照して決まるスワップ(CMSスワップ)
- 金融機関の権限で早期終了される条項が付いているスワップ(コーラブルスワップ)
- ・・・(その他にも驚くほど多数の種類がある)
プレーンバニラ金利スワップの種類
プレーンバニラな金利スワップは、アウトライトスワップとベーシススワップの2種類に大きく分かれる。
- アウトライトスワップは変動金利と固定金利を交換するもの
- ベーシススワップは種類の違う変動金利どうしを交換するもの
アウトライトスワップは変動金利の数だけ種類があるが、大きく分けると2種類。
- ターム物レートを参照するスワップ
- 翌日物レート(オーバーナイトレート)を参照するスワップ(オーバーナイトインデックススワップ、OIS)
ターム物レートとは翌日物よりも長い期間の金利であり6カ月金利や3カ月金利などがある。
ターム物レートの具体例としては、
・LIBORをはじめとするIBOR(銀行間金利)
・TORFなどのターム物RFR
などがある。
ターム物RFRはRFRを参照するスワップや先物の金利をもとに算定される変動金利指標である。
ターム物レートは前決めの金利であり、利払いのかなり前(6カ月前や3カ月前など)に変動金利サイドの利息額が決まる。
これに対して、翌日物レートを参照するスワップはOISと呼ばれ、OISの変動金利は後決めの金利であり、利払いの直前(2営業日前、5営業日前など)にならないと、変動金利サイドの利息額が決まらない。
翌日物レートとは今日借りて明日返す金利であり、期間が1営業日の金利のこと。通貨ごとに1つの翌日物レートが Risk Free Rate (RFR) として指定されており、2021年末のLIBOR廃止以降はRFRを参照するスワップ(RFRスワップ)が標準的な金利スワップとなる。
金利スワップレートの決まり方(計算方法)
金利スワップレートとは、略してスワップレートとも呼ばれるが、金利スワップの契約時に決まる固定金利のことである。一般的な満期の固定金利がマーケットに呈示されており、情報端末などから取得できる。
スワップレートがどのように決まるかと言うと、変動金利支払いの期待値の割引現在価値と、固定金利支払いの割引現在価値の釣り合いが取れるように逆算される。
変動金利支払いの期待値の割引現在価値は、
Σ(元本×フォワードレート×付利期間×ディスカウントファクター)
で計算する。
フォワードレートはざっくり言うと金利の期待値であり、これはマーケットで観測されるスワップレートからあらかじめ構築しておいたイールドカーブ(プロジェクションカーブ)を補間して求める。
付利期間はデイカウントフラクションなどと呼ばれ、年率の金利から実際の利息額を求めるのに使う期間であり、年単位で求める。6カ月ごとに交換する金利スワップであれば付利期間は6カ月のことであり、年単位で求めるので0.5に近い値となる。デイカウントフラクションの求め方は契約で定められるデイカウントコンベンションの種類によって異なる。
ディスカウントファクター(割引因子)は、将来キャッシュフローを現在価値に割り戻すのに使うもので、これもマーケットで観測されるOISレートなどからあらかじめ構築しておいたイールドカーブ(ディスカウントカーブ)を補間して求める。
一方、固定金利支払いの割引現在価値は、
Σ(元本×固定レート×付利期間×ディスカウントファクター)
で計算する。
これらが釣り合うように固定レートが逆算されるので、
Σ(元本×フォワードレート×付利期間×ディスカウントファクター)
=固定レート×Σ(元本×付利期間×ディスカウントファクター)
を固定レートについて解けばよい。すると、
固定レート=
Σ(元本×フォワードレート×付利期間×ディスカウントファクター)
÷ Σ(元本×付利期間×ディスカウントファクター )
と求まる。金融機関は金利スワップの契約時にこの計算を行っている。
参考文献
スワップ取引のすべて(第5版) 実践デリバティブ: Excelでデータ分析 EXCELでわかるLIBORディスカウントとOISディスカウント(CD-ROM付き) Interest Rate Swaps and Their Derivatives: A Practitioner’s Guide (Wiley Finance Book 510) (English Edition) Interest Rate Derivatives Explained: Volume 1: Products and Markets (Financial Engineering Explained) (English Edition) Interest Rate Derivatives Explained: Volume 2: Term Structure and Volatility Modelling (Financial Engineering Explained) (English Edition)あわせて読みたい
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