バミューダンスワップションのキャリブレーション対象

まずはプレーンなバミューダンスワップションのプライシングを考える。

対象とするのは、原資産スワップがバニラスワップ、つまり
 
・元本
・固定レート
・変動サイドのスプレッド
 
がいずれも固定値でフラットなものだ。
クーポンはシンプルなIborと固定レートの交換であり、クーポンにキャップフロアなどオプショナリティは付いておらず、スワップ全体に対するオプショナリティのみだ。
 
この商品は、権利行使日を取引開始日、スワップ満期日を取引終了日とするバニラスワップのバスケットオプションに近い性質を持っている。
バミューダンは権利行使日が複数あるため、対応するバニラスワップは複数ある。これらをコターミナルスワップという。ターミナルが取引終了日であり、コは共通のという意味なので、取引終了日が共通のスワップたちである。
権利行使日が複数あるため、スワップションの買い手はこれらコターミナルスワップのうち、どれをスタートさせるのかを選ぶことができる。一度権利行使するとその後ろに控えているスワップションが全て消滅するため、オプションとしては1つしかない。つまりオプションのポートフォリオではなく、ポートフォリオのオプションだ。
 
たくさんあるコターミナルスワップに依存するオプションであるため、このオプションを評価するには、コターミナルスワップションの市場価格にフィッティングさせる必要がある。
金利の期間構造モデルで求めたコターミナルスワップションの価格が市場価格に一致するように、モデルパラメーターを設定することになる。
 
ここで、フィッティング対象のコターミナルスワップの固定レート、つまりストライクをどう設定するか、という問題がある。
よくある方法ではATMF、つまりフォワードスワップレートをストライクとする。というのは、市場から日次で取得できるスワップション価格は、ATMFしかないからだ。しかしながら、プライシング対象の原資産スワップの固定レートはたいていATMFではない。このため、本当であれば、原資産スワップと同じ固定レートのコターミナルスワップションに合わせなければならない。ここで、原資産スワップの変動サイドにスプレッドが乗っている場合は、固定レートからスプレッドを差し引いたものをストライクとする。なぜなら、市場でクォートされているのは変動サイドのスプレッドがゼロのスワップション価格だからである。
 
コターミナルスワップションのみに合わせるとすると、オプション満期つまり権利行使日1つに対して、コターミナルスワップション1つが対応する。したがって、オプション満期ごとにキャリブレーション対象が1つだけあることになる。ここで仮にキャリブレーションしようとしているモデルパラメーターが、オプション満期ごとに別々の値で、かつ、オプション満期ごとにパラメーターが1つずつであれば、このパラメーターを動かすことで市場価格に完全に一致させることができる。
 
このように、バミューダンスワップションの場合は、原資産スワップがバニラであり、クーポンにオプションが付いていない。また、市場でクォートされているスワップションの原資産スワップと異なる点は、
・固定レートがATMではない
・変動サイドにスプレッドが乗っている
という2点のみであるから、キャリブレーション対象の選び方は比較的シンプルである。

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