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コーラブルの意味とは
コーラブル商品とは、早期解約条項が付いている商品である。
早期解約とは、契約上の満期よりも早い段階で解約されることである。
ただし早期解約が発生し得るタイミングは、契約に明記されている。
早期解約されると、それ以降のキャッシュフローの受け払いはなくなる。
早期解約権は、コーラブル商品を販売する金融機関サイドに付与されるものが多い。つまり、コーラブル商品を購入する顧客サイドは、金融機関から「早期解約権の行使(コール)」をされたら、必ずコールに応じなければならない。顧客は金融機関に対して、早期解約権というオプションを売っていることになる。オプションの売り手は、買い手による権利行使に応じる義務がある。
コーラブル債やコーラブル預金の場合、コールによって元本が返済されるが、顧客サイドからすれば、運用期間の途中で元本が返ってきてしまい、その後のクーポンはもらえない。したがって、返ってきた元本をまた別の商品に再投資しないといけないが、適切な再投資先が見つかる保証はない(再投資リスク)。
オプション行使の種類
コーラブル商品は権利行使の種類によって、大きく2つに分かれる。
早期解約権を行使できるタイミングが1回のみか、複数回あるか、である。
- 1回のみのもの(ヨーロピアンコーラブルやワンタイムコーラブルと呼ぶ)
- 複数回あるもの(バミューダンコーラブルやマルチコーラブルと呼ぶ)
実際にはバミューダン型が多い。
ヨーロピアンかバミューダンかによって、商品性に大差ないように見えるが、実は時価評価の方法が大きく変わってくる。
コーラブル商品の種類
以下のようなものがある。
- コーラブル債(債券)
- コーラブル預金
- コーラブルスワップ(デリバティブ)
コーラブル債は仕組債の一種とされることもあるが、債券の種類として一般的なものである。コーラブルな債券なので、発行体の都合の良いタイミングで早期償還できる債券である。契約上の満期よりも早く元本が返済される可能性がある債券、ということになる。早期償還のオプションを発行体に対して売っている形になるので、そのオプション料に見合う分だけ、債券のクーポンが高く設定される。
コーラブル預金も仕組預金の一種だが、ネットバンクなど身近なところでもよく見かける。コーラブル債と同様、契約上の満期よりも早いタイミングで、元本が返ってくる可能性がある。早期償還のオプション料に見合う分だけ、預金金利が高く設定される。
コーラブルスワップはいわゆるプレーンバニラな(標準的な・シンプルな)スワップではなく、エキゾチックな(非標準的な・複雑な)スワップだが、こちらもエキゾチックなスワップの中では一般的によく見られるものである。
コーラブルスワップの種類
コーラブルスワップにはクーポンの内容によって非常に多くの種類がある。
- コーラブル(固定クーポン)スワップ
- コーラブルリバースフロータースワップ
- コーラブルキャップトフロータースワップ
- コーラブルCMSスワップ
- コーラブルCMSスプレッドスワップ
などなど
たとえばコーラブル固定クーポンスワップであれば、LIBORなどの変動クーポンと固定クーポンを交換するスワップに、早期解約オプションが付いている。たいてい、固定クーポンを支払うのが金融機関、固定クーポンを受け取るのが顧客、となっている。顧客は金融機関に早期解約オプションを売っている形になるので、そのオプション料に見合う分だけ、顧客が受け取れる固定クーポンが高くなる。
コーラブルスワップはたいてい、仕組債や仕組預金を構成する部品の一つとして、証券会社などのデリバティブ業者間で取引される。
コーラブルスワップの時価評価方法:スワップ+逆方向のスワップション
コーラブルスワップのプライシングは、
- コーラブルなしの普通のスワップ
- そのスワップとは受け払いが逆方向のスワップ、を原資産とするスワップション
の2つに分解し、それぞれの時価評価の合計をコーラブルスワップの時価評価とする。
スワップションについては以下の記事を参照。
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スワップションをプライシング(時価評価、価格計算)する方法は? | Quant College
金融機関が
・固定クーポンの支払い
・変動クーポンの受け取り
のコーラブルスワップであれば、
スワップションの原資産スワップは、それとは反対サイドなので、
金融機関が
・固定クーポンの受け取り
・変動クーポンの支払い
となる。
したがって、
- 固定クーポン支払いのスワップ
- 固定クーポン受け取りのスワップション
に分解して評価する。
金融機関が早期解約の権利を行使すると、
・逆方向のスワップがスタートするので、
・もともとのスワップと受け払いが完全に相殺される。
キャッシュフローがネットでゼロになるので、これをもって解約されたことになる。
早期解約される可能性のある顧客から見ると、金融機関に解約権を売っているので、スワップションの時価はマイナスになる(オプションの売りは時価がマイナス)。
スワップとバミューダンスワップションで時価評価方法が大きく異なる
たとえばマルチコーラブルスワップのプライシングは、
- コーラブルなしの普通のスワップ
- それとは逆方向のスワップを原資産とするバミューダンスワップション
に分けて時価評価し、
これら2つの時価の合計をマルチコーラブルスワップの時価とする。
しかし重要なのは、コーラブルなしの普通のスワップと、バミューダンスワップションは、評価の仕方が全く異なる、ということだ。
- コーラブルなしのスワップは、イールドカーブを補間するだけで、モデルなしで評価できる
- 一方で、バミューダンスワップションの評価には金利の期間構造モデルが必要であり、PDE、グリッド積分、ツリーなどで数値計算することになる
重要なことだが、バミューダンスワップション評価の副産物として、コーラブルなしのスワップの時価も、数値計算の中で得られる。
ここで問題になるのは、コーラブルなしのスワップを
- モデルなしで普通に評価するか
- スワップションの評価モデルの副産物として得られる時価をそのまま評価として用いるか
どっちにするか、ということである。
実務ではどちらのケースも見られるが、けっこう1.が多い気がする。
その理由は、2.はモデルや数値計算に起因する誤差が含まれるので正確ではなく、1.からそれなりにズレることが多いからである。
もちろん2.の評価が1.にかなり近くなることもあるが、そのためには、
- モデルがマーケットにきちんとフィッティングされていること
- 数値計算の設定を厳しくして、誤差を小さく抑えること
などが必要である。
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