コーラブル商品のプライシング(時価評価、価格計算) 再訪

コーラブル商品とそのプライシングについては過去に以下の記事で書いた。

コーラブル商品は、金融機関が早期解約できる商品である。
プライシングは以下の2つに分けて評価し、合計する。
・早期解約のないスワップ
・それと受け払いが反対のスワップを参照するスワップション
スワップションが権利行使されると、反対方向のスワップが生じてキャッシュフローが相殺されるからである。

金融機関サイドから見た、コーラブル商品の時価の出方について考えてみる。

もし現在のマーケットが、スワップの条件と比べて自社にとって有利に傾いていると、スワップの時価はプラスで出てくる。よくあるのは、顧客に(場合によっては複雑な)クーポンを支払い、Liborを受け取る、という商品である。この場合、クーポンの期待値がLiborのフォワードよりも小さいと、支払いが少ないので時価がプラスで出てくる。

このとき、反対方向のスワップションの時価はどうだろうか。スワップの時価がプラスなので、それとは反対サイドのスワップは時価がマイナスである。つまり、スワップションはアウトオブザマネーである。しかしながら、満期までにマーケットが動いてインザマネーになる場合もあることから、若干のプラスの時価が出る。金融機関はたいてい解約権の保有者であるから、スワップションはロング(買い)である。

よって、コーラブル商品の時価は、
・スワップが大きくプラス
・スワップションが小さくプラス
となり、スワップションは買いだから、スワップの時価にスワップションの時価を足せばよい。よってこの場合、プラスの時価を2つ足すのでネッティングは起こらない。

では逆の場合を考える。つまり、スワップが金融機関にとってある程度マイナスになっている場合である。このとき、スワップは付利な条件となっている。すなわち、クーポンの期待値がLiborのフォワードよりも大きく、クーポンの払い過ぎになっている。

この場合、反対サイドのスワップションの時価はどうだろう。原資産のスワップは反対サイドだから、プラスになっている。つまり反対サイドのスワップションはインザマネーになっている。イメージとしては、クーポンを払い過ぎなので、それを解約する価値が高まっている、という感じである。クーポンが市場実勢と比べて割高になっており、それを払うのを止めるメリットが大きい。したがってスワップションの時価は大きくプラスで出てくる。

よって、コーラブル商品の時価は、
・スワップが大きくマイナス
・スワップションが大きくプラス
となり、スワップションは買いだから、スワップのマイナスの時価とスワップションのプラスの時価をネッティング(相殺)することで、コーラブル商品の時価が出てくる。大きなマイナスと大きなプラスを足すと、相殺されて絶対値は小さいことになる。

このような場合は、スワップもスワップションも両方プラスの時価が出ている時と比べて、時価は不安定になる。すなわち、ネッティングによって桁落ち(つまり元々の情報の多くが失われている)が起こっているので、モデルや数値計算法の設定が少し違うだけで、仕上がりの時価が見た目上、大きく異なるように見える。それに対して、スワップもスワップションも両方プラスの時価が出ている状況であれば、ネッティングが起こらないため、モデルや数値計算法の設定が少し異なっているくらいであれば、見た目上、仕上がりのコーラブル商品の時価は大きく違わないだろう。