キャップフロア付き変動金利クーポンの評価

債券などで変動金利に上下限が付いているものが多いが、このプライシングはどうすればよいか。

 
まず、上下限がないただの変動金利を考える。
このプライシングには、変動金利の期待値を求める必要があるが、それはいわゆるフォワードレートである。
フォワードレートは市場のスワップレートなどから逆算できる。
このため、上下限のないただの変動金利クーポンをプライシングするには、フォワードレートがわかればよく、ボラティリティは必要ない。
 
次に、上限が付いている場合を考える。
クーポンを受け取る側からすれば、上限なしの場合に比べて、金利が上限を超えた場合に、もらえる金利が減ってしまう。
これはつまり、金利のコールオプション、いわゆるキャップを売っていることに等しい。
金利が、上限という名のストライクを超えると、金利とストライクの差分をオプションの買い手に払わないといけないが、これはまさしくコールオプションの売りである。
 
よって、上限の付いた変動金利の受け取りを評価するには、
金利スワップの変動legと同様に、
 
・元本 × 付利期間 × フォワードレート × ディスカウントファクター
 
と評価して、これから、コールオプションの売りの時価、つまり、
 
・元本 × 付利期間 × Blackの公式
 
を差し引けばよい。オプションの売りだから、足すのではなく、差し引く。
Blackの公式のインプットとして、金利のインプライドボラティリティが必要になる。
 
上限の付いた変動金利の、支払いであれば、符号が逆、つまり売り買いが逆になる。
すなわち、変動金利の支払いと、コールオプションの買いになる。
 
下限が付いている場合も同様である。
クーポンを受け取る側からすれば、下限が付いているおかげで、金利が下限より下がった場合、下限なしの場合に比べて、多くのクーポンを受け取れる。
これはつまり、金利のプットオプションの買いである。
 
よって、下限付きクーポンの受け取りを評価するには、
・フォワードレートで評価した結果に、
・金利のプットオプション、つまりフロアの時価を足せばよい。
 
逆に、下限付きクーポンの受け取りではなく支払いの場合は、下限が付いているせいで、支払う金利が割高になってしまうので、
・フォワードレートで評価した結果から、
・さらに金利のプットオプションの時価を差し引けばよい。
 
これらを組み合わせれば、
 
上下限の付いた変動金利の受け取りを評価するには、
・フォワードレートで評価した結果から、
・コールオプションの時価を差し引いて、
・プットオプションの時価を足せばよい。
 
上下限の付いた変動金利の支払いを評価するには、
・フォワードレートで評価した結果に、
・コールオプションの時価を足して、
・プットオプションの時価を差し引けばよい。

—–