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ベーシススワップとは

デリバティブの入門書に書かれていないが実務では重要な商品として、ベーシススワップがある。これは異なる種類の変動金利を交換する金利スワップのことであるベーシスとは、変動金利の差分を意味する。

ベーシススワップには以下の3種類がある。

  1. 通貨ベーシススワップ(クロスカレンシーベーシススワップ)
  2. インデックスベーシススワップ
  3. テナーベーシススワップ(テナースワップ)

そのため、ひとくくりに「ベーシススワップ」といっても、人や文献、文脈によって指しているものが異なるので、注意が必要だ。
以下ではこれら3種類について順番に解説する。

通貨ベーシススワップ

おそらくこれが最も有名ではないかと思われる。
通貨ベーシススワップは、異なる通貨の変動金利を交換するスワップのことである

例えば、

  • (USD LIBOR3M) vs (JPY LIBOR3M + XCCY Basis)
  • (USD LIBOR3M) vs (EURIBOR3M + XCCY Basis)

などである。
いずれも異なる通貨の変動金利を交換している。

ここで、XCCY Basisというのは「通貨ベーシス (Cross Currency Basis) 」と呼ばれるもので、ベーシススワップ契約時に値を固定するスプレッドである。XCCYはCross Currencyの略だが、他にも多数の略語があるので注意。通貨ベーシスはUSDではない方に乗せる、というのが市場慣行(=マーケットコンベンションという)である。

ドル円の通貨ベーシスの水準は大きくマイナスになり続けているが、これはざっくりいうと通貨間の需給を表しており、円に比べてドルに需要が集まっていることがわかる。

通貨ベーシスについては以下の過去記事を参照のこと。

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インデックスベーシススワップ

通貨は同じだが金利インデックス(金利指標)の種類が異なるレートを交換するスワップである。インデックスベーシススワップという用語は一般的なものではないので注意。このカテゴリーに分類されるベーシススワップたちを総称して指す用語があまりないので、ここでは便宜的にインデックスベーシススワップと呼ぶことにする。

例えば、

  • (TONA + LO Spread) vs (JPY LIBOR6M)
  • (JPY LIBOR6M + LT Spread) vs (ZTIBOR 6M)

などである。
他にもZTIBOR6MとDTIBOR6Mを交換するベーシススワップなどもある。

いずれも交換する金利の通貨はJPYで同じだが、異なる種類の金利指標を交換している

ベーシスはたいてい金利が低くなりそうなサイドに乗る。

1つ目はTONAとLIBORを交換するベーシススワップである。TONAはJPYの翌日物金利指標(オーバーナイトインデックス)である。
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オーバーナイトインデックスとLIBORを交換するスワップは、JPY以外にもたいていのメジャーな通貨で存在している。

  • USDなら、SOFRとUSD LIBOR3Mを交換するスワップなど
  • EURなら、ESTRとEURIBOR6Mを交換するスワップなど

LO SpreadはLIBORとオーバーナイトインデックスの差分を表しており、これまた呼び名がたくさんある。

  • OIS-LIBORベーシス
  • LIBOR-OISベーシス
  • OISベーシス

などと呼ばれるが、どれも同じものを指している。

2つ目はLIBORとZTIBORを交換するベーシススワップである。
TIBORにはZTIBORとDTIBORの2種類があることに注意。
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LIBORとTIBORを交換するスワップにも多くの呼び名があり、

  • LIBOR-TIBORスワップ
  • TIBOR-LIBORスワップ
  • LTスワップ
  • TLスワップ

などと呼ばれるが、どれも同じものを指している。
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LT Spreadはその名の通りLIBORとTIBORの差分を表しており、TL SpreadやLT Spreadなどとも呼ばれる。

テナーベーシススワップ(テナースワップ)

通貨は同じで金利インデックス(金利指標)の種類も同じだが、金利インデックスのテナーが異なるレートを交換するスワップである。
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例えば、

  • (JPY LIBOR3M + Tenor Basis) vs (JPY LIBOR6M)
  • (USD LIBOR3M + Tenor Basis) vs (USD LIBOR6M)

などである。

これらはいずれも、

  • 受け払いする通貨が両サイドで同じ(JPYまたはUSD)
  • 金利指標の種類も両サイドで同じ(LIBOR)
  • しかし金利指標のテナーだけが異なる(3Mと6M)

上記のように3Mの変動金利と6Mの変動金利を交換するスワップは3s6s(スリーシックス)などと呼ばれる。実際には他にも、1Mと6Mを交換するスワップや、1Mと3Mを交換するスワップなどもある。

テナースワップとは | Quant College

Tenor Basisとあるのは、その名の通りテナーベーシスであり、テナーが短い方に乗せるのがマーケットコンベンションである。

何に使うのか

なぜテナーの異なる金利を交換するのか。

金融機関の顧客がイレギュラーなテナー(JPYなら3M)の変動金利を固定化したい、という場合、JPY LIBOR3Mと固定金利を交換するスワップを約定することになる。

しかしJPY LIBOR3Mを参照するスワップは、JPY LIBOR6Mを参照するスワップに比べて流動性が格段に下がる。
一方で、JPY LIBOR3MとJPY LIBOR6Mを交換するテナーベーシススワップはインターバンク市場での流動性がある

このため、顧客とLIBOR3Mスワップを約定すると、金融機関はインターバンク市場でJPY LIBOR6Mスワップと3s6sを約定してヘッジする。こうして2つに分けてヘッジするわけだが、JPY LIBOR6Mのサイドが受け取りと支払いで相殺され、結果としてJPY LIBOR3Mスワップが複製できる。

このように、イレギュラーなテナー (JPYの場合は3M) のスワップを、標準的なテナー (JPYの場合は6M) のスワップを使ってヘッジするために、その間に「はさむ」ベーシススワップが必要になる

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