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【仕組債の仕組みとカラクリ】CMSリンク債とは | Quant College
CMSリンク債の復習
CMSフローター債などとも呼ぶ。
クーポンは10年など、常に同じ満期のスワップレートを参照する。
元本償還には仕組みが入っていないことが多く、普通に満期で額面が返済される。バミューダンコーラブル条項が付いている場合は、満期に至る途中で早期償還される可能性がある。
時価評価(プライシング)方法
プライシングするうえでのポイントは以下。
- CMSレートの期待値(フォワードレート)を求めるにはコンベクシティ調整が必要
- クーポンにキャップやフロアが付いている場合も、CMSオプション評価にはフォワードレートを求めるのと同様に、コンベクシティ調整が必要
- バミューダンコーラブル条項が付いている場合は、金利の期間構造モデルでイールドカーブ全体をモデル化し、数値計算で早期解約権(バミューダンCMSスワップション)を評価する必要がある
コンベクシティ調整のお気持ち
コンベクシティ調整は、例えばクーポンの計算期間が6か月なのに、クーポンの参照期間が10年(満期10年のスワップレートを参照する)、というように、クーポンの計算期間と参照期間が異なる場合に必要となる調整である。
技術的な言葉で言い換えると、CMSの場合にはフォワード測度とアニュイティ測度のずれを調整するためのものである。
CMSクーポン自体は6か月ごとに一回払いの金利なので、フォワード測度で期待値をとる。しかし期待値をとる対象となるのは、満期10年のスワップレートであり、これは一回払いの金利ではなく、例えば20回など、何回も使いまわされる金利である。このような場合の期待値計算はアニュイティ測度(スワップ測度)のもとで求めるのが通常だが、CMSの場合にはフォワード測度のもとで期待値を求めないといけない。
コンベクシティ調整とCMSクーポンの評価については以下の記事を参照。
CMSオプションのプライシング: 2つの方法 | Quant College
コンベクシティ調整は、その調整部分を抜き出して求めるというよりも、調整済みの正しい期待値を直接求めることが多い。
時価評価(プライシング)の手順:早期償還条項なしの場合
コーラブル条項が付いていない場合の手順は以下の通り。
- イールドカーブを作成する
- OISなどからディスカウントカーブを作成
- CMSレートが例えばJPY LIBOR6Mを参照するスワップレートであれば、JPY LIBOR6Mのプロジェクションカーブを作成
- CMSクーポンをレプリケーション法で評価する場合には、ボラティリティスマイルがインプットとして必要になるので、CMSクーポンに対応するスワップ満期のスワップションボラティリティサーフェイス(オプション満期×ストライク)を市場から取得する
- スワップションスマイルを補間・補外するためのスマイルモデルを、市場のボラティリティスマイルにキャリブレーションする
キャリブレーションとは:金融・ファイナンス・金融工学における意味 | Quant College - イールドカーブと、キャリブレーション済みのスマイルモデルをインプットにして、レプリケーション法(数値計算法には数値積分を用いる)によってCMSクーポンのフォワードレート、コールオプション(クーポン上限が付いている場合)、プットオプション(クーポン下限が付いている場合)を評価する
- クーポンの時価は、フォワードレートからコールオプション価値を差し引き、プットオプション価値を足すことで期待値を求め、ディスカウントカーブで割り引いて求める
- 満期の元本償還の時価は、ディスカウントカーブで割り引いて求める
- クーポンと元本償還の時価を合計する