【仕組債の仕組みとカラクリ】CMSリンク債とは

ざっくり解説

CMSリンク債は、クーポンがスワップレートに連動する仕組債である。
別の言い方として以下のような用語もある。

  • CMSフローター債
  • CMS連動債
  • CMS債

CMSとはConstant Maturity Swapの略で、同じ満期のスワップレートを常に参照することを意味する。例えばCMS10Yであれば、満期10年のスワップレートを常に参照する。「CMS10Yのクーポンを支払う」とはつまり、クーポン支払日の数営業日前に観測された満期10年のスワップレートをクーポンとして支払う、ということである。

「Constant Maturity」の意味は以下の通り。

  • 1年後に支払うクーポンは、1年後に観測された満期10年のスワップレートに連動して決まる
  • 2年後に支払うクーポンは、2年後に観測された満期10年のスワップレートに連動して決まる
  • 3年後に支払うクーポンは、3年後に観測された満期10年のスワップレートに連動して決まる

すなわち、観測日が将来に向けて進んでいっても、同じ満期のスワップレートを常に参照する。

これとは逆に、観測日が将来に向けて進んでいくと、スワップの満期がどんどん短くなっていく場合は、Coterminal Swap(コターミナルスワップ)という。

コターミナルスワップションとは | Quant College

CMSクーポン

クーポン計算式

CMSリンク債のクーポンは例えば以下のような形をしている。

\(0\% \leq \mathrm{CMS10Y} + 0.05\%\)

一般的な形で書くと以下の通り。

\(F \leq a S + b\)
\(F\) はクーポンの下限で、0%と設定されていることが多い(ゼロフロア)。
\(a\) はレバレッジで、1.0と設定されていることが多い。
\(S\) はCMSレートで、満期5年、10年、20年などのスワップレートが多い。
\(b\) はスプレッドで、符号はマイナスのこともある。

もちろんクーポンに上限(キャップ)を設定することもできる。

CMSクーポンの特徴

ポイントになるのは、CMSリンク債の利払いは6か月ごと等で、10年よりも圧倒的に短い。しかし6か月ごとにもらえるクーポンは満期10年のスワップレートに連動する。すなわちクーポンの計算期間(6か月)と参照期間(10年)が異なっているのである。

金利の参照期間と計算期間の違い | Quant College

このような場合にクーポンの期待値を精緻に求めようとすると技術的な問題によって少しややこしくなる(コンベクシティ調整が必要になる)。

CMSオプションのプライシング: 2つの方法 | Quant College

計算期間は6か月と短いのに満期10年という長期金利がもらえてしまう、と見ることもできる。長期金利の上昇にベットする商品といえよう。

元本償還

CMSリンク債の元本償還には仕組みが入っていない場合が多い。
このため、もし発行体にデフォルトがなく満期まで保有すれば、額面がそのまま返済される。

リバースフローター債などは早期償還(マルチコーラブル)条項が付いていることがほとんどだが、CMSリンク債の場合はマルチコーラブルになっていないことも多い。

もしマルチコーラブルが付いていた場合は、契約で定められた行使可能日の中から、発行体が自分の都合でタイミングを選んで早期償還できる。ここで早期償還とは、契約で定められた満期よりずっと前に元本を返済してしまうことである。

あわせて読みたい

韓国のドイツ国債CMS商品 | Quant College

CMSスプレッドオプションとコピュラ | Quant College

金利のテナーとは: 4つの意味 | Quant College

コーラブル債とは | Quant College

リバースフローター債とは | Quant College

【仕組債の仕組みとカラクリ】キャップ付フローター債とは | Quant College