実務ではBlack-Scholesモデルでプライシングなんてしません
教科書にはデジタルオプションの評価式がよく載っているが、あれはBlack-Scholesモデルの解析解であり、その他のモデルでは使えない。
オプション市場にはスマイルがあるため、実務ではオプションプライシングモデルとしてBlack-Scholesモデルを使うことはない。
このため、実務ではデジタルオプションの時価評価として、教科書に載っている解析解を使うことはない。
ではどのようにスマイルを織り込んでプライシングするのか。
レプリケーション法を使うのである。
レプリケーション法とコールスプレッドとは
レプリケーション法は、エキゾチック商品をバニラ商品の組み合わせで複製する方法である。
バニラ商品で複製できれば、あとはひとつひとつのバニラオプションをプライシングして、それらを合計すれば、エキゾチック商品のプライスが出せる。
デジタルオプションのペイオフは階段型になっているが、これをコールスプレッドあるいはプットスプレッドで近似する。
コールスプレッドとは、ストライクが微妙に異なる2つのコールオプションの買いと売りを組み合わせたものである。
例えば、
・ストライク100のコールを買って
・ストライク101のプットを売る
といったものだ。
こうするとペイオフは次のように変化していく。
・100まではペイオフがゼロ
・100から101まではペイオフが線形に増える
・101を超えるとペイオフが増えずにフラットとなる
100から101までは、デジタルオプションを完全には複製できていない。
実際には、市場で流動性のあるストライクは限られているので、101ではなく105や110などしか見つからないかもしれない。
そうすると近似の精度は悪くなるが、実務ではこのように複製したものとしてプライシングする。
レプリケーション法とボラティリティスマイル
デジタルオプションのプライシングは、
・ストライクが微妙に異なるコールを2つプライシングするか、
・ストライクが微妙に異なるプットを2つプライシングするか、
のどちらかになる。
2つのオプションで異なるのはストライクのみだが、
ストライクが異なると、スマイルによって、バニラオプションの解析解にインプットするボラティリティが異なる。
具体的には、スマイルモデルでボラティリティスマイルをストライク方向に補間・補外したボラティリティをインプットする。
異なるストライクに対応するボラティリティをインプットすることにより、市場のスマイルがプライスに反映されることになる。