ざっくり解説
ファイナンスの教科書で必ず出てくるBlack-Scholesモデルだが、これをプライシングモデルとして使っている市場参加者はいない。
どういうことかというと、BSモデルは、あくまで価格単位の変換公式として使うのみであり、価格がわからない状態から価格を出すためには使っていない、ということだ。
インプライドボラティリティは、既に手元にある市場価格が、仮にBSモデルで出されているとすれば、どれくらいのボラティリティに対応するか、を表している。インプライドボラティリティ自体が価格を表しており、価格の単位として、円やドルなどの通貨ではなく、ボラティリティを選んだ場合の価格が、インプライドボラティリティである。
さらに、ボラティリティの種類には以下の3つがある。
・Blackボラティリティ
・ShiftedBlackボラティリティ(=ShiftedLognormalボラティリティ)
・Normalボラティリティ
ボラティリティの種類が変わると、同じ価格であってもインプライドボラティリティの数値は異なる。
例えば、同じ1つの市場価格を指していても、単位を変えると、以下のようにいろんな表示形式がある、ということだ。
・10000円
・100ドル
・0.3 Blackボラティリティ
・0.05 ShiftedBlackボラティリティ
・0.003 Normalボラティリティ
上記の数値はいい加減に決めたものだが、ここで言いたいことは、「たとえ同じ市場価格を表していても、単位が異なると、価格は全然違う数値になる」ということだ。
市場にはボラティリティスマイルが存在するので、インプライドボラティリティについては、よく以下のような言われ方をする。
「間違ったインプットを、間違ったモデルに入れることで、正しい価格を得る」
ここで、
・間違ったインプット: インプライドボラティリティ
・間違ったモデル: BSモデル
・正しい価格: 市場価格
である。
ではこの正しい価格というのは、どういうモデルで出されたものなのだろうか。それがスマイルモデルであり、具体例としてはSABRモデル、Vanna-Volga法、SVI、などが挙げられる。
これらスマイルモデルで出された価格を、仮にBSモデルで再現しようとしたら、どれくらいのボラティリティでないといけないか、を表しているのがBlackボラティリティである。
それと同じ価格を、仮にNormalモデルで再現しようとしたら、どれくらいのボラティリティでないといけないのか、を表しているのがNormalボラティリティ、というわけである。