教科書に必ず出てくるこの2つの式の関係を考えてみる。
今回は例外的に数式がけっこう出てくる。
式の外観としては、
・Black-Scholes式は、スポット価格と、金利や配当などドリフトの情報をインプットとする
・Black式は、フォワード価格と割引債価格をインプットとする
という違いがあるが、結局のところ違いはそれだけである。
Black-Scholes式は、
S(0) exp(-qT) N(d1) – K exp(-rT) N(d2),
d1 = {log(S(0)/K) + (r-q + 0.5 Sigma^2)T} / (Sigma √T)
d2 = d1 – Sigma √T
である。
ここで、2つの仮定を置く。
(仮定1)時点ゼロで観測される満期Tのフォワード価格F(0, T)が、次のように書けるとする:
F(0, T) = S(0) exp{(r-q)T}
(仮定2)時点ゼロで観測される満期Tの割引債価格D(0, T)が、次のように書けるとする:
D(0, T) = exp(-rT)
これら2つの仮定を認めれば、Black-Scholes式は式変形するとBlack式に一致する。実際、
exp(-rT) [ S(0) exp{(r-q)T} N(d1) – K N(d2) ]
= D(0, T) [ F(0, T) N(d1) – K N(d2) ]
となり、d1, d2は、
d1 = {log(S(0)/K) + log(exp{(r-q)T}) + 0.5 (Sigma^2) T} / (Sigma √T)
= {log( S(0) exp({(r-q)T}) / K ) + 0.5 (Sigma^2) T} / (Sigma √T)
= {log(F(0, T)/K) + 0.5 (Sigma^2) T} / (Sigma √T)
d2 = d1 – Sigma √T
となり、Black式に一致する。
Black-Scholes式は、金利以外のオプション、例えば通貨オプションや株式オプションなどに用いるが、そもそもBlack-Scholesモデルの仮定として、
・国内金利は確定的でフラット
・外国金利または配当利回りは確定的でフラット
としている。そして、これらを認めると、上記の2つの仮定は満たされてしまう。
このため、Black-Scholes式で評価しているということは、結局のところBlack式で評価しているのと同じことである。
この背景にあるのは、金利が確定的と仮定すると、リスクニュートラルメジャーとフォワードメジャーが同じになる、ということがあるが、そのあたりは話が長くなるので別記事にしよう。