ざっくり回答
オプション価格から逆算されるインプライドボラティリティが、行使価格(=ストライク)によって異なる現象である。実際にマーケットのオプション価格で観測される。
- ストライクが現在の原資産価格(ATM)に近いほどボラティリティが低い
- ストライクがATMから離れるほど高い
したがって横軸にストライク、縦軸にボラティリティをとるとUの字型になることから、スマイルと呼ばれる。
ボラティリティスマイルやスマイルと言われたら、その意味は、
- ストライクごとにボラティリティの水準が異なること
- ストライクがATMから離れてグラフの両端に行くほどボラティリティが高くなること
と思っておけばよい。
別の呼び方
スマイルには別の呼び方もある。
- (ボラティリティ)スマイル
- (ボラティリティ)スキュー
- (ボラティリティ)スマイルカーブ
はどれも同じものを指している。人によって違う用語を使うので注意。
一般には、
・Uの字型になっている場合にスマイル
・右下がりになっている場合にスキュー
ということが多い。
・右上がりになっている場合に逆スキュー
ということもある。
特に株式オプションの場合は、満期が短く、ストライクが低いオプションほど、ボラティリティが高くなる。つまりスキューが観測されることが多い。
スマイルカーブという用語は、通貨オプションのトレーダーなど、FXマーケットの参加者が使うことが多い。
スマイルが発生する原因・理由
Blackボラティリティの場合
オプションマーケットの参加者が将来の原資産価格に想定している確率分布は、対数正規分布ではないからだ。
ただし上記は、インプライドボラティリティのクォート形式がBlackボラティリティの場合である。Normalボラティリティの場合については後で述べる。
Blackボラティリティは、マーケットのオプション価格が、もし仮にBlack-Scholesモデルで求められていれば、インプットであるボラティリティの水準がどれくらいか、を表している。
しかし、重要なこととして、マーケットのオプション価格はBlack-Scholesモデルで求めているわけではない。
スマイルが発生するようなモデル(SABRモデルなど)で理論的な目線が設定され、それを参考にしつつも、最終的には、取引を行うオプショントレーダーの相場観・さじ加減で決まる。ひとことで言ってしまうと、マーケットの需給で決まる。
これらは当然、Black-Scholesモデルで求まるオプション価格と整合的になっているわけではない。Black-Scholesモデルでは原資産価格が対数正規分布に従うと仮定しているが、市場参加者はそのような前提で取引を行っていない、ということである。したがって、Black-Scholesモデルではボラティリティがストライクによらず一定と仮定しているのだが、その仮定に従うことなくマーケットで決まったオプション価格をもとにして、ボラティリティを逆算すると、ストライクによって異なる値になってしまう。これがボラティリティスマイルの発生する原因である。
Normalボラティリティの場合
クォート形式がNormalボラティリティの場合も同様である。
オプションマーケットの参加者が将来の原資産価格に想定している確率分布は、正規分布ではないからだ。
NormalボラティリティはNormalモデルのインプットであり、Normalモデルでは原資産価格は正規分布に従うと仮定する。
ここで、ボラティリティのクォート形式は原資産や通貨によって異なることに注意。
・通貨オプションや株式オプションなど金利以外の場合はBlackボラティリティ
・金利オプションの場合は、低金利通貨ならNormalボラティリティ、高金利通貨ならBlackボラティリティ、が多い
参考文献
Smile Pricing Explained (Financial Engineering Explained) (English Edition) The Volatility Smile (Wiley Finance)あわせて読みたい
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