スティキーストライクとスティキーデルタの違い

ボラティリティスマイルのモデリングで重要なのは、

 

⑴今日のスマイルへのフィッティング

 

⑵将来のスマイルのダイナミクスを再現すること
 
の2つである。

 

そのうち今回は⑵スマイルのダイナミクスについて、基礎的な用語を確認する。
 
まずそもそも、スマイルのダイナミクスとはどういうことか。
それは、例えば為替レートが上がると、
為替スマイルのATMの位置が右にシフトするが、
このとき為替スマイル全体がどのように動くのか、
ということである。
 
スマイルのダイナミクスの特徴としては、以下のような点がある。
 
・スマイル全体は、動かないのか、右に動くのか、左に動くのか
・動くといっても、どれくらい動くのか
・ATMボラティリティ、スマイル全体の水準は、上がるのか、下がるのか
 
スマイルのダイナミクスのパターンはいくつもある。
ここではそのうちメジャーなもので、かつ、両極端なものを2つ紹介する。
スティキーストライクとスティキーデルタである。
 
これらは、原資産が上がったときに、スマイル全体が
・動かないのか
・右に動くのか
にそれぞれ対応している。
つまり、
 
・原資産が動いてもスマイルが動かないのが、スティキーストライク
・原資産の動きと同じ方向にスマイルが動くのが、スティキーデルタ
 
というわけである。
 
スティキーストライクとは、原資産が動いても、各ストライクに対応するボラティリティが、変化しないものだ。
 
原資産が100から110に上がったとしよう。
このときATMは110になっている。
また、スマイルの形状は下に凸の放物線状で変化なしとしよう。
原資産が100のとき、ストライク100のボラティリティが15%、ストライク110のボラティリティが20%としよう。
ATMが100から110に変わっても、このボラティリティがどちらも変化しない。
すると、ATMのボラティリティは15%から20%に上がることになる。
 
スティキーデルタは、原資産が上がると、スマイル全体が右に動くものだ。
 
上と同じ例では、新たにATMとなったストライク110のボラティリティは、20%から、以前のATMストライク100のボラティリティであった15%に下がることになる。
つまり、ATMからの相対的な距離に応じてボラティリティが決まるため、ATM自体が右に動くと、スマイル全体が右に動くわけである。
この、ATMからの相対的な距離を表しているのがデルタであるため、デルタとボラティリティの組み合わせが変わらないことから、スティキーデルタと呼ばれる。
 

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