【仕組債の仕組みとカラクリ】リバースフローター債の時価評価(プライシング)方法

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リバースフローター債の特徴

リバースフローター債は、
・LIBORが上がればクーポンが下がり、
・LIBORが下がればクーポンが上がる
という仕組債だ。LIBORとクーポンが逆の動きをすることに注意。

クーポンには必ず下限(たいてい0%)が付いており、上限が付いている場合もある。

  • クーポンに下限が付いている場合は、LIBORが上がり過ぎても損しないわけなので、投資家は金利キャップコールオプション)の買いになっている
  • クーポンに上限が付いている場合は、LIBORが下がり過ぎても得しないわけなので、投資家は金利フロアプットオプション)を売りになっている

リバースフローター債などの金利系の仕組債にはたいてい早期償還の条項が付いており、(バミューダン)コーラブル条項とよぶこともある。コーラブル条項は発行体が自分の都合の良いときに借金を早めに返済できる権利である。

このように、リバースフローター債には以下の2種類のオプション性が組み込まれているのがわかる。
・クーポンの上限や下限
・債券全体の早期償還(コーラブル条項)

ここで重要なのは、上記の2つでは原資産が異なるということだ。
・クーポンに付いているオプションはLIBORの変動に対するオプション
・債券全体に付いているオプションはリバースフロータースワップの変動に対するオプション

上記に注意して時価評価を行うことになる。

時価評価(プライシング)の手順

ここでは債券を特殊なスワップとみなして、コーラブルな債券をスワップとスワップションに分解して評価する場合を取り上げる。この方法については以下を参照。

コーラブル債の時価評価方法 | Quant College

時価評価の手順の一例をざっくり書くと以下の通り。

  1. 債券を、変動サイドでリバースフロータークーポンを受け取り、固定サイドでは元本ゼロに対してゼロのクーポンを支払う金利スワップとみなす。ただし満期には元本が受け取れるものとする。
  2. 早期償還できる権利は、上記の金利スワップ(リバースフロータースワップ)を原資産とするスワップションであるとみなす。
  3. スワップレートなどからディスカウントカーブとプロジェクションカーブを作成する
  4. マーケットからキャップボラティリティのサーフェイス(満期×ストライク)を取得し、スマイルモデル(ShiftedSABRモデルなど)を満期ごとにキャリブレーションする
  5. (以下の手順6.でATMスワップションにしかキャリブレーションしないような場合は、この手順5.は不要)
    マーケットからスワップションボラティリティのキューブ(満期×スワップ期間×ストライク)を取得し、スマイルモデルを満期×スワップ期間ごとにキャリブレーションする
  6. 早期償還できる権利、すなわち(リバースフローター)スワップションを評価するには、金利の期間構造モデル(Hull-Whiteモデルなど)が必要になる。これについてもマーケットにキャリブレーションする必要があるが、どの(満期, スワップ期間, ストライク)の組み合わせに対してキャリブレーションするのか(キャリブレーション対象の選択)は必ずしも唯一の正解があるわけではない。
    最も簡便な方法としては、ATMコターミナル(バニラ)スワップションにフィットさせることである。しかし原資産はバニラスワップではなくリバースフロータースワップなので、マーケットのバニラスワップにフィットさせるだけではそのリスク特性が表現できない。
    これは少し発展的な話題であり、以下の関連記事も参照のこと。
    リバースフロータースワップションのキャリブレーション対象 | Quant College
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  7. リバースフロータースワップは、変動サイドを以下の3つに分解して評価する。金利のキャップとフロアはスマイルモデルでマーケットのスマイルを補間することで評価する
    1. LIBORのフォワードレートの受け取り
    2. 金利キャップの買い
    3. 金利フロアの売り(クーポンに上限が付いている場合)
  8. リバースフロータースワップションは、行使可能日が複数あるバミューダンなので、解析的に評価するのは困難であり、キャリブレーション済みの金利の期間構造モデルを用いて、数値計算により求める。古典的には三項ツリーを使う方法がテキストには紹介されているが、最近ではグリッド積分とツリーを組み合わせる方法を使うことが多い。
  9. コーラブルでないリバースフロータースワップの時価から、スワップションの時価を差し引く(投資家サイドはスワップションの売り)ことでコーラブルリバースフロータースワップが評価できる

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