教科書によく出てくるが実務でほぼ使わない金利の期間構造モデルの一覧

金利の期間構造モデルの教科書は洋書も含めて非常に多く出ているが、これら教科書でよく紹介されているのに実務ではほとんど使わないモデル、というのは実はけっこう多い。今回はそういう「学んでも実務で使う機会は少ない金利の期間構造モデル」を紹介する。テキストを読んでいてこれらのモデルに出くわしたら、実務での重要性は低いので斜め読みするか読み飛ばした方が効率的だと思われる。当然ながら、大学の授業で指定された教科書であれば、それに載っているモデルは期末試験で出題される可能性があるので、そういう意味での重要性は、また別の話である。

早速だがそのモデルの一覧は以下。

  • Ho-Leeモデル
  • Vasicekモデル
  • Black–Karasinskiモデル
  • CIRモデル
  • HJMモデル

Ho-Leeモデルは最もシンプルなショートレートモデルで、平均回帰性が入っていないのが特徴だ。よく教科書に出てくるが、シンプル過ぎるので実務では使わない。しかし最もシンプルな金利の期間構造モデルなので、計算練習にはよい。ショートレートから出発して、債券価格や瞬間フォワードレートを求めたり、というような計算練習くらいでしか使うことはないといえる。

Vasicekモデルもたいてい金利モデルの教科書に載っているが、実務では使わない。Todayのイールドカーブに合わせられないからだ。この問題を改善したのがHull-Whiteモデルで、実務ではこちらを使う。Vasicekモデルも学生の計算練習くらいの用途しかないだろう。

Black-Karasinskiモデルは、ひと昔前、まだ金利が高かった時代は外貨金利に使われていたが、世界的な低金利時代になって使われなくなった。特徴は、金利に対数正規分布を適用するところであり、金利がマイナスに行かない。これは昔は良い特徴だったかもしれないが、今では欠点でしかない。XVAのテキストではデフォルト確率のモデリングの文脈でBlack-Karasinkiモデルが出てくることがあるが、実務で使うことは滅多にないといえる。

CIRモデルはデフォルト確率のモデリングによく使われているが、金利に使うことはまずない。このモデルも、所定の条件を満たせばマイナスに行かないのが特徴だが、マイナス金利が常態化している現在においては欠点でしかない。

HJMモデルも教科書に必ずといっていいほど書いてあるが、これは特定のモデルを指しているわけではなく、非常に多くのモデルを包含するフレームワークである。HJMフレームワークといった方がいいだろう。大多数の金利の期間構造モデルはHJMフレームワークの具体例なので、金利モデルを深く学ぶには避けて通れない重要なものである。しかしながら、HJMモデルそれ自体を実務で使うわけではない、ということは意識して、教科書を読んだ方が良い。フォワードレートのボラティリティ、あるいは債券価格のボラティリティを、具体的に定式化しないとそれ以上計算を進められない。HJMの具体例は実務で使うのだが、HJMそれ自体はかなり抽象的なフレームワークである、という点を押さえておきたい。

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