金利の期間構造モデルのトレンドの移り変わり: 正規分布型と対数正規分布型

こちらもおすすめ

【初心者向け】LIBOR廃止とRFR移行の体系的まとめ | Quant College

【初心者向け】CVA入門の体系的まとめ | Quant College

【初心者向け】CVAモデルの体系的まとめ | Quant College

【随時更新】金利の期間構造モデルを勉強するのにおすすめの本:7冊 | Quant College

金融工学関連でおすすめの本:まとめ(目次) | Quant College

前提知識

金利の期間構造モデルには大きく分けて2種類ある。

  • Hull-Whiteなどの低次元マルコフモデル
  • LMM (Libor Market Model) などのマーケットモデル

低次元マルコフモデルとマーケットモデル | Quant College
低次元マルコフモデルとマーケットモデルの違い まとめ | Quant College

また、金利は
低金利になるほど正規分布に近づいていく
高金利になるほど対数正規分布に近づいていく
ことが知られている。

低次元マルコフモデルは正規分布型が多い

ショートレートモデルなどの低次元マルコフモデルでは、金利のモデリングを正規分布型で話を進めることが多い。

もっとも、昔のように高金利の環境では、Black-Karasinskiモデルなど、ショートレートを対数正規分布型でモデリングするものも使われていたようだ。しかし昨今の低金利の環境では特に、低次元マルコフモデルは、正規分布型でモデリングすることが多い。

昨今の低金利環境では、以下のような考えで、ショートレートモデルは正規分布型で使われている

  • 金利が低いので、金利の分布が正規分布に近くなることを踏まえて、正規分布型にする
  • どれだけマイナス金利が深堀りされても対応できるように、正規分布型にする

マイナス金利への対応は、正規分布型にするか、対数正規分布型をシフトさせる (Shifted Lognormal) かの2通りがある。
マイナス金利対応 | Quant College

マーケットモデルは対数正規分布型をベースに作られてきた

一方で、LMM (Libor Market Model) などのマーケットモデルでは、対数正規分布型でモデリングする文献が多く、正規分布型のマーケットモデルはあまり見かけない。
【簡単にわかりやすく】Liborマーケットモデルとは | Quant College

これは、LMMが流行ったころはまだ欧米も比較的高金利で、対数正規分布をベースに考えることが多かったからかもしれない。あとは、対数正規分布をベースにすれば、シフト幅を導入することで容易にスキューを表現できるから、というのもあるだろう。

もちろん、昨今のマイナス金利環境では、LMMはスキューよりもむしろマイナス金利に対応するために、シフト幅を導入することでShiftedLMMとして用いられている。これは、シフトしたら対数正規分布型になるものだから、結局、対数正規分布型だ。
Shifted Liborマーケットモデル | Quant College

しかし金利に対してシフト幅が大きい場合は、Shifted対数正規分布型(Shifted Lognormal型)の金利の分布は、対数正規分布よりも正規分布に近くなる
ShiftedLognormal分布 | Quant College

もちろん、対数正規分布型といっても、LMMでは、シフト幅に加えて、確率ボラティリティを導入する (SVDD-LMM) ことが多いため、1つ1つのLIBORがそれぞれのフォワードメジャーのもとで、きれいな対数正規分布に従うわけではない。
Liborマーケットモデル: マイナス金利とスマイル | Quant College

まとめ

というわけで、昨今使われているモデルは、以下のどちらかのパターンが多い。

  • 正規分布型の低次元マルコフモデル(Hull-Whiteモデルなど)
  • シフトさせた対数正規分布型のマーケットモデル(ShiftedLMMなど)

参考文献:より深く学びたい方は

あわせて読みたい

【金利の期間構造モデル】マイナス金利とハルホワイトモデル (Hull-Whiteモデル) | Quant College

【金利期間構造モデルをわかりやすく】HJMモデルとは(Heath-Jarrow -Mortonフレームワーク、ヒース・ジャロー・モートンモデル) | Quant College

SABRモデルのマイナス金利対応 | Quant College

【わかりやすく】CEVモデル(Constant Elasticity of Variance Model、定弾性分散モデル)とは | Quant College

【簡単にわかりやすく】Liborマーケットモデルとは | Quant College

Liborマーケットモデル: マイナス金利とスマイル | Quant College

Shifted Liborマーケットモデル | Quant College

Liborマーケットモデルのパラメーターとは | Quant College

Liborマーケットモデルのキャリブレーション対象 | Quant College

Rebonatoの公式のアイデア | Quant College

Rebonatoのパラメトライゼーション | Quant College

こちらもおすすめ

【初心者向け】LIBOR廃止とRFR移行の体系的まとめ | Quant College

【初心者向け】CVA入門の体系的まとめ | Quant College

【初心者向け】CVAモデルの体系的まとめ | Quant College

【随時更新】金利の期間構造モデルを勉強するのにおすすめの本:7冊 | Quant College

金融工学関連でおすすめの本:まとめ(目次) | Quant College