金利の期間構造モデルとアセットモデル ⑵

前回説明したアセットモデルは、各金利が参照する期間ごとに、別々にモデリングする。

イメージとしては、イールドカーブのうち特定の期間を切り出して、イールドカーブの一部だけを説明している感じだ。
このため、モデリングしていない期間の金利は、説明することができない。
5年後スタートの5年金利を説明しているアセットモデルは、同じ5年後スタートの7年金利や10年金利を説明することはできない。

一方で、期間構造モデルは、イールドカーブ1本に対して1つのモデルが対応する。
期間構造モデルはそれ単体で、イールドカーブ全体をモデリングしているため、そのイールドカーブのどの期間を切り出しても、その期間を参照する金利の動きを説明することができる。
JPY Libor 6Mのイールドカーブを説明する期間構造モデルは、そのインデックスについて、何年後スタートの何年金利であっても、そのモデル単体で説明することができる。
 
こういった違いがあるので、モデルの使い道も、アセットモデルと期間構造モデルで異なる。
 
アセットモデルは主に、マルチコーラブルなどの早期償還条項がない、変動金利クーポンの時価評価に用いられる。
なぜなら、ノンコーラブルなスワップの変動金利は、クーポンの時点によってそれぞれ参照する期間が異なるが、これらのクーポンは同じモデルで統一的に評価する必要がなく、クーポンごとに別々に評価できるからである。
 
一方で、期間構造モデルは主に、マルチコーラブルなど早期償還条項が付いているスワップの評価に用いられる。
なぜなら、マルチコーラブル商品は、各権利行使時点における行使価値と継続価値を比較することで評価する必要があるからだ。
これはつまり、権利行使時点の数だけ原資産がある、バスケットオプションを評価していることになる。
権利行使時点が異なれば、金利の参照期間について、スタート時点とエンド時点が異なる。
期間が異なる金利は別の原資産であるため、これら全てに依存するマルチコーラブル商品は、期間の異なる多数の金利と、それらの間の相関を考慮して評価しないといけない。
これはまさしくバスケットオプション、例えば日経平均とS&Pに依存してペイオフが決まるようなオプションと同じである。
マルチコーラブル商品の権利行使時点の個数は20や40といったオーダーなので、アセットモデルが20個や40個必要になり、明らかに効率が悪い。
このような場合は、イールドカーブ全体を1つのモデルで表現する期間構造モデルを用いるのが普通である。

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