金利が為替や株価と異なるのは、通貨だけでは原資産が1つに定まらない、という点だ。
為替であれば、ドル円、と通貨ペアを決めれば、原資産が1つに決まる。
株価でも、日経平均、とインデックスや銘柄を決めれば、原資産が1つに決まる。
これに対して、金利の場合は、以下の3つを決めないと原資産が1つに定まらない。
⑴通貨
⑵金利インデックス(テナーを含む)
⑶スワップ期間(いつからいつまでか)
⑴の通貨については、為替や株価と同じ話である。
円金利とドル金利は別の原資産であり、別々のマーケットがある。
⑵の金利インデックスとは、JPY LIBOR 6Mなどのことであり、この場合はテナー6Mを含む。
JPY LIBOR 6MとJPY LIBOR 3Mは別の原資産であり、テナーによって異なる、別々のFRAやスワップのマーケットがある。
さらに、当然だが、テナーが6Mで同じでも、金利インデックスが異なると別の原資産になる。
JPY LIBOR 6MとJPY TIBOR 6Mは異なる原資産であり、別々のマーケットがある。
⑶のスワップ期間は、例えば、何年後スタートの何年金利なのか、ということである。
同じ10年金利でも、
・1年後スタートの10年金利
・2年後スタートの10年金利
は別の原資産である。
なぜなら、イールドカーブの異なる区間を参照するからである。
1年後スタートだと満期は11年後だが、
2年後スタートだと満期が12年後になる。
ここで、よく金利の期間構造と呼ばれるのは、⑶の次元の話である。
同じ金利インデックスであっても、いつからいつまでか、という期間が異なると、別の原資産になってしまう。
一方で、マルチカーブと呼ばれるのは、⑵の次元の話に対応している。
金利インデックスやテナーごとに異なるイールドカーブを生成する。
以上の3つが決まって初めて1つの原資産が定まる。
つまり、為替や株価に比べて、次元が2つ多い。
例えば、円金利ひとつ取ってみても、以下の円金利はどれも異なる原資産である。
・JPY LIBOR 6Mの1年後スタート10年金利
・JPY LIBOR 6Mの1年後スタート5年金利
・JPY LIBOR 3Mの1年後スタート10年金利
・JPY LIBOR 3Mのスポットスタート10年金利
・JPY TIBOR 6Mのスポットスタート10年金利
ここで、異なる原資産、というのはどういう意味か。
それは、異なる分布がマーケットに織り込まれている、という意味である。
JPY LIBOR 6MとJPY LIBOR 3Mでは、
スワップ市場やベーシススワップ市場を通して、満期が同じでも異なるレートがクォートされている。
これはつまり、満期が同じでも、分布の中心、つまり期待値が異なることを意味する。
ボラティリティについても同様である。
もっとも、ボラティリティになると、テナーごとに異なるボラティリティを市場から取得できるかというと、必ずしもそうではない。
しかしながら、本質的に異なる金利であり、期待値が異なるということは、ボラティリティも異なると考えるのが自然だろう。
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