金利の期間構造モデルは多資産モデル

Hull-WhiteモデルやLibor Market Modelに代表される金利の期間構造モデルは、多資産モデルである。

 

期間構造モデルは、モデル1つでイールドカーブ全体を説明するわけだが、これはどういうことか。結局のところ、1つのモデルで、満期の異なる多数の割引債価格のダイナミクスが決まる、ということである。
 
満期の異なる割引債すべてを一斉にモデリングするという意味で、多資産モデルなのである。
満期の異なる割引債価格の相関は、明示的にモデリングされていないが、結果的に、モデルパラメーターで表されることになる。
 
金利の期間構造モデルは、まず低次元マルコフモデルとマーケットモデルの2種類に分かれる。
さらに、低次元マルコフモデルは次の2種類に分かれる。
 
・ショートレートモデル、または、フォワードレートモデル
・マルコフファンクショナルモデル
 
ショートレートモデルやフォワードレートモデルは、いずれも、正規分布に従うファクターと割引債価格の関係が、パラメトリックに、かつ、ただ1つに決まってしまう。つまり、割引債価格がファクターの関数なのだが、その関数形がモデルによって決まってしまっており、モデルのユーザーはその関数形を変更できない。
一方で、マルコフファンクショナルモデルは、ファクターと割引債価格の関係が、あらじめ決まっておらず、モデルのユーザーが柔軟に設定することができる。
 
フォワードレートモデルは、フォワードレートからモデリングをスタートするが、フォワードレートと割引債価格には明示的な関係式があるため、フォワードレートをモデリングするということは、割引債価格をモデリングしているのと同じことである。つまり、フォワードレートモデルでは、割引債価格のダイナミクスを設定することからモデリングをスタートしているのと同じことになる。フォワードレートモデルは、割引債価格モデルなのである。
 
一方、ショートレートモデルは、フォワードレートや割引債価格からスタートするのではなく、ショートレートからスタートする。このため、割引債価格は所与ではなく、ショートレートのデリバティブとしてプライシングする対象である。
しかしながら、応用上使われるショートレートモデルの多くは、HJMモデルというフォワードレートモデルの特殊なケースであるため、結局のところ、割引債価格はショートレートの関数として明示的に書けることになる。つまり、応用上出てくる多くのショートレートモデルもまた、割引債価格モデルである。
 
今後はこれらのモデルのうち一つ一つを具体的に見ていく。

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