マルコフ関数モデル (Markov Functional Model)のキャリブレーション

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マルコフファンクショナルモデルについては以下の記事を参照。

マルコフ関数モデル (Markov Functional Model) の特徴 | Quant College

キャリブレーションするモデルパラメーター

マルコフファンクショナルモデルでキャリブレーションしないといけないものは2つある。

⑴割引債価格はガウシアンファクターの関数だが、その関数形
⑵ガウシアンファクターのボラティリティパラメーター

⑴はキャリブレーションが必須だが、⑵は必須ではない。つまり、決め打ちで、具体的な値で固定している会社もある。

キャリブレーション対象となるマーケットプライス

⑴と⑵のキャリブレーション対象は以下の通り。

⑴は、クーポンの参照金利のスマイルに合わせる。
ただし、⑵を固定してキャリブレーションしない場合は、⑴はコーラブル条項に対応するコターミナルスワップレートのスマイルに合わせる。

⑵は、コーラブル条項に対応するATMコターミナルスワップションに合わせる。

一般のコーラブルなエキゾチックスワップのキャリブレーション対象

以前にも書いたが、コーラブルエキゾチックスワップのキャリブレーション対象には2種類あって、

(1)クーポンに付いているオプションに対応するもの
(2)エキゾチックスワップ全体に付いているオプションに対応するもの

である。

例えばコーラブルCMSスワップであれば、

(1)はCMSクーポンに付いているキャップフロア、つまりCMSオプション
(2)はCMSスワップ全体に付いているスワップション、つまりCMSスワップション

である。
しかし市場のCMSスワップションは観測しにくいため、バニラスワップションで代用するケースも多い。

以上を踏まえて、マルコフ関数モデルのキャリブレーションは、

⑴をクーポンのオプションに合わせて、
⑵をスワップ全体のオプションに合わせる、

というのが基本パターンになる。

ただし、コーラブルバニラスワップの場合は、原資産スワップが固定クーポンであるため、クーポンにオプションが付いていない。このため、⑵を固定してキャリブレーションしない代わりに、⑴をコターミナルのバニラスワップションに合わせる、ということになる。

Hull-Whiteモデルとの比較

キャリブレーションについても、マルコフ関数モデルは、ハルホワイトモデルと同じ点と、異なる点の両方がある。
ハルホワイトモデルと同じ点は以下の通り。

  • 個別取引ごとに異なるパラメーターを求めるので、いわゆるローカルキャリブレーションである。
  • ガウシアンファクターの平均回帰パラメーターはフラットで固定するのでキャリブレーションしない。

ハルホワイトモデルと異なる点は以下の通り。

  • 割引債価格の関数形という、いわばハルホワイトモデルにはない追加パラメーターのようなものがあり、そのキャリブレーションをしないといけない。
  • 割引債価格の関数形に加えて、ガウシアンファクターのボラティリティパラメーターもキャリブレーションする場合は、⑴と⑵の両方を同時にキャリブレーションしないといけない。
    これはなぜかというと、⑴をキャリブレーションするには、⑵が決まっていないといけないからである。お互いに依存し合っているわけである。このため、⑵に初期値を与えて、その下で⑴をキャリブレーションして、その下で⑵をキャリブレーションする、ということを繰り返さないといけない。これはかなり計算負荷が高いため、⑵を固定してしまうケースも多いというわけである。

参考文献:より深く学びたい方は

以下はHunt & Kennedyによる金利モデルのテキストであり、最後にMarkov Functional Modelの詳しい説明がある。Hunt & Kennedyはマルコフファンクショナルモデルの提唱者なので、本家本元による解説が読める。

Financial Derivatives in Theory Rev (Wiley Series in Probability and Statistics)

以下のBrigo & MercurioのAppendixにもマルコフ関数モデルの解説がある。

Interest Rate Models – Theory and Practice: With Smile, Inflation and Credit (Springer Finance)

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