ShiftedLognormal分布

移動対数正規分布と訳されていることもある。洋書ではよく、DisplacedDiffusionと書かれている。DisplaceはShiftとだいたい同じ意味だ。

この分布は、シフトしたら対数正規分布に従うものである。
計算上はこの考え方でいいのだが、
イメージとしては、対数正規分布と正規分布をミックスした中間の分布、と解釈した方が良い。
 
仮にシフト幅がゼロに近いと、この分布はほぼ対数正規分布分布だ。
わずかにシフトしたら対数正規分布になる、ということなので、対数正規分布で近似可能だ。
 
一方で、仮にシフト幅が金利に比べて非常に大きいと、ほぼ正規分布になる。
対数正規分布というのは、対数をとったものが正規分布に従う、というものだ。この対数をとるという操作は、変化率をとることとだいたい同じだ。
なので、対数正規分布というのは、変化率が正規分布に従うものである。
 
ここで、金利+シフト幅の変化率が正規分布に従うわけだが、変化率は変化幅をもとの値で割ったものだ。
金利+シフト幅の変化幅は、シフト幅が変化しないので、金利の変化幅に等しい。
分母の、金利+シフト幅は、シフト幅が大きいと、ほぼシフト幅で近似でき、これは定数だ。
よって、変化率は、金利の変化幅を定数で割ったものになる。確率分布としては定数は無関係なので、結局、金利の変化幅が正規分布に従うことになる。これはまさしくNormalモデルである。
 
よって、ShiftedLognormal分布は、対数正規分布と正規分布の中間に位置するものと解釈でき、シフト幅が小さいほど対数正規分布に近づき、シフト幅が大きいほど正規分布に近づく。
 
ShiftedLognormalの考え方は、もともとはマイナス金利対応のためではなく、金利にスキューを入れるために導入されたものだ。
対数正規分布でもなければ、正規分布でもないため、Blackボラティリティで見てもスキューが入り、Normalボラティリティで見てもスキューが入ることになる。
 

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