金利の期間構造モデルとアセットモデル

エキゾチックデリバティブをプライシングするのに必要なプライシングモデルについて、金利系で用いる金利モデルの分類を見ていく。これはスマイル補間に用いるスマイルモデルの話ではなく、プライシングモデルの話である。

金利モデルは大きく2つに分けられる。アセットモデルと、期間構造モデル(Term Structure Model)である。
 
アセットモデルは、特定の期間の金利のみをモデリングするものであり、期間の異なる金利同士の相関関係は説明しない。例えば3年後スタートの5年金利と、4年後スタートの4年金利を同じ形でモデリングするが、それぞれのパラメーター値は異なるし、また、これら2つの金利の間にどういう関係があるのかは一切説明しない、というものだ。
 
基本的なものにBlackモデル、Shifted Blackモデル、Bachelierモデルがある。
これらは実際には、プライシングモデルとしてではなく、市場価格をボラティリティの形で提示するときや、提示されたボラティリティを価格に直すために用いられる。
しかしこれらは典型的なアセットモデルである。実際に、市場のスワップションボラティリティはマトリックスの形で提示されており、Blackボラティリティが、何年後スタートの何年金利かによって違う値になっている。また、異なる期間の金利の相関については何も教えてくれない。
そのほかには、CMSの評価に用いるLinear Terminal Swap Rateモデルなどがある。
アセットモデルは、コーラブルなど早期償還がないスワップの時価評価、特に、変動金利クーポンの時価評価に用いる。
 
金利はたとえ同じ通貨の同じ金利インデックスから来るものであっても、金利の参照期間がいつからいつまでなのかによって、異なる原資産になる。期間が異なれば別の原資産なのである。実際に、同じJPY Libor 6Mであっても、スポットスタート5年と、スポットスタート10年のスワップレートは違う値でクォートされており、変動の仕方も少し異なる。
これは為替レートや株価とは根本的に異なる。ドル円の為替レートは、市場でクォートされているのは1つだけだし、日経平均も、1つだけであり、期間によって異なる値になっているわけではない。そもそも為替レートや株価には期間の概念がない。
 
このように、金利は期間が異なれば別の原資産なので、イールドカーブ全体を説明するには工夫が必要だ。アセットモデルであれば、期間の数だけモデルとそのパラメーターが必要になり、無数のパラメーターを用いて評価することになるので、イールドカーブ全体を説明するのは不可能だ。
 
そこで、イールドカーブ全体を説明するために用いるのが期間構造モデルである。これについては次回に書くことにする。

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