【簡単にわかりやすく】Liborマーケットモデルとは

Liborマーケットモデルとは

Liborマーケットモデル (Libor Market Model; LMM)とは、金利の期間構造モデルの一種であり、市場で観測されるLiborたちを直接モデル化するものである。金利の期間構造モデルの中で、ユーザーの都合に応じて最も柔軟にカスタマイズできる種類のモデルである。

様々なイールドカーブ変化を表現できるだけの自由度・柔軟性がある反面、推定しないといけないパラメーターが多くなりがちなほか、マーケットレートへのキャリブレーションには近似解が必要となり、プライシング時の数値計算には最も効率の悪い方法(モンテカルロシミュレーション)を用いないといけない。

Liborマーケットモデルの位置づけ

金利モデルには2種類ある。

  • 特定の期間の金利だけをモデル化する非期間構造モデル(アセットモデル)
  • 全ての期間の金利(すなわちイールドカーブ全体)をまとめて統一的にモデル化する期間構造モデル

このうち、前者の非期間構造モデルは比較的シンプルな金利商品の評価に用いる。後者の期間構造モデルは複雑な金利商品(金利系エキゾチック商品)の評価に用いる。

期間構造モデルはさらに2種類に分かれる。

  • 低次元マルコフモデル:
    Hull-Whiteモデル、Cheyetteモデル、Markov Functionalモデルなど
  • マーケットモデル:
    Liborマーケットモデル、スワップマーケットモデルなど

イールドカーブには満期方向のグリッドポイントが多数あり、その各グリッドの金利たちが、互いに相関しつつも別々の動きをする。その意味でイールドカーブ全体をまじめにモデル化しようとすると、大量のファクターが必要になる。

低次元マルコフモデルは、イールドカーブ変動の裏にある大量のファクターを、少数のファクターに集約・要約することで、近似的にイールドカーブの変化を表現するモデルである。名前に低次元とついていることからもわかる通り、ファクター数は1つ(ワンファクターモデル)の場合がほとんどで、たまに2つ(ツーファクターモデル)の場合がある程度である。

一方、マーケットモデルは、マーケットで観測できる金利を直接モデル化するものであり、イールドカーブを構成する金利たちを全て、個別にモデル化する。したがってマーケットモデルはそのままだとかなりのファクター数がある。Liborマーケットモデルを満期30年で6カ月ごとのテナーで使うとすると、全部で60個のLiborがモデル化される(実際には最初の1つのLiborはFixing済みなのでモデル化されない)。しかしLiborマーケットモデルも実際に使う際には主成分分析によってファクター数を減らして使うことも多い。ではマーケットモデルと低次元マルコフモデルの違いは何かというと、Liborマーケットモデルの場合、個別のLibor間の相関をインプットし、それら相関と整合的になるようにモデル化できる、という柔軟性にある。

Liborマーケットモデルの使い道

複雑なペイオフを持つコーラブル商品の評価に用いるのに適任だが、比較的シンプルな商品の評価にも広く使用されてきた。特に日系金融機関ではマイナス金利になる以前、低次元マルコフモデルよりもLiborマーケットモデルが人気であらゆる金利系エキゾチック商品に使われていた。その後、対数正規型のLiborマーケットモデルを使っていた会社が、マイナス金利後にHull-Whiteモデルに移行したとの話がよく流れてきた。

複雑なペイオフを持つコーラブル商品の典型は、
・コーラブルCMSスプレッドスワップ
・コーラブルCMSスプレッドレンジアクルーアル
などである。

そのほか、経路依存性の強い商品にも広く使われてきた。例えば
・スノーボール
・スノーブレード
などと呼ばれるもので、前回のクーポンに直近のLiborが上乗せされていってクーポンが計算されるような商品である。

CMSスプレッド関連は現在も取引されているが、現在ではスノーボールやスノーブレードはすっかり取引されなくなった。

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