【簡単にわかりやすく】コーラブル債とは:債券+スワップション【仕組債の仕組みとカラクリ】

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コーラブル債の価格の求め方、すなわちプライシングについては以下を参照。

【仕組債の仕組みとカラクリ】コーラブル債の時価評価方法 | Quant College

コーラブル債とは

コーラブル債は発行体の都合の良いときに早期償還できる債券である。
発行体が早期償還の時点を選択できる条項をコーラブル条項という。

コーラブル条項の名前の由来について、早期償還が起きるのは、大まかに考えると、債券の市場価値が額面を上回ったときである(早期償還によって発行体は市場価値よりも安い額面を支払うだけで済む)から、額面を行使価格のように考えれば、ペイオフがコールオプションに似ているところから来たと思われる。

コーラブル債とは逆にプッタブル債というものもある。これは投資家が自分の都合の良いときに発行体に早期償還させる権利が付いている債券である。早期償還させるということはつまり、「貸したお金を早く返せ」と言って満期より早く返済させる、ということである。これはコーラブルとは逆に、債券の市場価値が額面を下回ると権利行使が起こる(早期償還によって投資家は市場価値より高い額面を受け取れる)ので、ペイオフがプットオプションに似ている。
コーラブル債とプッタブル債の違い | Quant College

コーラブル債には以下の通り、かなり多くの種類がある。

  • (バニラな)コーラブル債
  • コーラブルリバースフローター債
  • コーラブルキャップ付きフローター債
  • コーラブルCMS債
  • コーラブルCMSスプレッド債

バニラなコーラブル債とは、クーポンが固定レートのものである。それに対して、その他のコーラブル債はクーポンが変動金利になっている。今回はクーポンが固定レートになっている、バニラなコーラブル債を見ていく。

金利低下で早期償還

早期償還とは、借りていた元本を、契約上の満期日より早いタイミングで返済することである。投資家サイドからすると、事前の想定より早く元本が返ってくるので、その時点で新たな投資先を見つけないといけなくなる(再投資リスク)。

これは投資家からすると不利な条項なので、他の条件(通貨、クーポン、満期、発行体など)が全て同じ債券であれば、コーラブル債の方が、コーラブルでない債券よりも価格は安くなる

発行体が早期償還するのはコーラブル債のクーポンに比べて市場の金利が低下したときである。発行体からすれば、市場金利が下がった場合、コーラブル債では市場金利より相対的に高い金利を支払ってしまっている。そのため、早期償還後に、低い市場金利で借りなおす方が有利である。
逆に金利上昇局面においては、発行体は市場金利よりも低い金利でお金を借りれているわけなので、それを手放したりはせず、そのまま借り続けることになる。

コーラブル債は市場金利が低下すると、満期よりも早い段階で償還されてしまう可能性があるので、実質的なデュレーションはコーラブルでない債券よりも短くなることになる。

発行体の都合の良いときとは言っても、早期償還できるタイミング(権利行使日)は契約であらかじめ定められている。たいてい債券の利払いと同じ頻度であり、6か月ごとの利払いであれば、6か月ごとに権利行使日が設定されていることが多い。

マルチコーラブルとワンタイムコーラブル

このように、権利行使日が複数設定されており、そのうちどこか1つの時点で発行体が早期償還できるものを、マルチコーラブル債バミューダンコーラブル債ということがある。
それに対して、権利行使日が1つしかないものをワンタイムコーラブル債ということがある。

ワンタイムコーラブルはネットバンクなども含め、多くの銀行の仕組預金で見かけることがあるが、仕組債の場合はマルチコーラブルのケースが多い。

コーラブル債の仕組みとメリット(=高い利回り)

投資家サイドのメリットとしては、高い利回りが得られることである。
満期やクレジット水準など、他の条件が同じであれば、コーラブルではない債券に比べて、コーラブル債の方が表面上のクーポンレートが高く設定される。

しかしどの仕組債にも共通する話だが、その高い利回りには以下のカラクリがある。

  • 投資家が認識しづらい、あるいは過小評価しているリスクを、債券に組み込むことによって、そのリスクの対価としてクーポンレートが高く設定されている

投資家が発行体に対してオプションを売っている形になっている。しかし仕組債を買う際にそのオプション売りの対価を投資家は受け取らない。買う際に現金で受け取らない代わりに、将来受け取るクーポンレートにその対価が上乗せされていると考えればよい。

オプションを売っているということは、発行体が権利行使した際には投資家は必ずそれに応じないといけないことを意味する。発行体が権利行使する、すなわちコールするのは発行体にとって都合がいいからコールするのである。したがってこれは投資家にとって不利な条項が付いていることを意味し、その不都合を受け入れる対価として高いクーポンを受け取れる、ということである。

コーラブル債の場合は、スワップションというオプションを投資家が発行体に売っている形になる。
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・マルチコーラブルの場合はバミューダンスワップション
・ワンタイムコーラブルの場合はヨーロピアンスワップション
が組み込まれている。

時価評価(プライシング)方法

以下の内容はコーラブル債に特有のものではなく、他のコーラブル商品(コーラブルリバースフローター債など)の時価評価も同様である。

コーラブル債の時価評価は大きく2つに分かれると思う。

  1. ツリーなどで債券部分とオプション部分を一体として評価する
  2. コーラブルでないバニラな債券と、スワップションに分解して評価する

債券とオプションを一体で評価

1つ目は古典的で教科書的な方法。
Hull-Whiteモデルなど、金利の期間構造モデルを使って、将来時点の金利の動きをツリーの形で生成する。
あとは満期から後ろ向きにツリーのノードをさかのぼっていき、
・将来時点の債券価値とコール価格を比較して小さい方を選択する
という処理を繰り返す。(逆にプッタブル債であれば、大きい方を選択する。)

コーラブル債を保有している投資家サイドからすると、早期償還のオプションを発行体に売っているわけだが、1つ目の方法ではこのオプション価値を織り込んだ債券価格を求める。

スワップとスワップションに分解して評価

2つ目は実務でも見かける方法。
・債券を金利スワップだと考える
・早期償還のオプションはスワップションだと考える

こうすることで、早期償還のオプション価値を抜き出して別途求めることができる。

まず債券を金利スワップの特殊な場合として書き換える。
例えば債券のクーポンが固定レートであれば、
・固定金利サイドの元本とクーポンは債券と同じ
・変動金利サイドの元本はゼロとする(ダミーのLeg)
・満期には通貨スワップのように元本交換ありとする。
・ただし変動金利サイドの元本はゼロなので、固定金利サイドのみ、満期に元本を受け取れる、とする

このように書き換えれば、債券を金利スワップとみなして評価できる。

早期償還のオプションは、
・上記の金利スワップとは受けと払いが逆のスワップを原資産とするスワップションと考える
・もちろん原資産スワップには、満期に元本キャッシュフローが付いている
・ただし、スワップションの権利行使時には、元本をリベートとして払う

とすればよい。

スワップションが権利行使されると、債券とは受けと払いが逆のスワップが発生するから、債券のクーポンに対応する固定金利サイドが相殺されて消える
また、満期の元本償還のキャッシュフローも、スワップションの権利行使により発生したスワップと、元からあった債券の元本償還とがキャンセルされて消える
さらに、権利行使時に元本をリベートとして払うので、権利行使すると元本は満期ではなく、権利行使時に返済されることが表現できる。

スワップ部分は、通常のスワップとして評価する。
スワップション部分は、バミューダンスワップションと同様に、Hull-Whiteモデルなど、金利の期間構造モデルで評価する。

別の方法として、バミューダンスワップションの評価においては副産物として、原資産スワップ部分の時価も求まるので、それの符号を反転させたもの(受けと払いが逆のスワップの時価)をスワップ部分の時価として用いることも可能。

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