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時価評価の方法については以下の記事を参照。
日経平均リンク債の時価評価方法 | Quant College
回答
日経平均リンク債は日経平均株価に応じてクーポンや元本償還の金額が変化する仕組債である。
このように株式に連動してキャッシュフローが決まる仕組債を一般にエクイティリンク債(Equity Linked Note; ELN)と呼ぶが、日経平均リンク債はその具体例であり、日経平均バージョンのELNである。
仕組みが入っているのは以下の3点。
- クーポン
- 満期の元本償還
- 早期償還
これらについて順番に見ていく。
クーポンについて
まずクーポンは、だいたい次の2種類がある。
・(高水準の)固定クーポン
・デジタルクーポン
デジタルクーポンは、株価が一定水準(クーポン判定価格)を上回れば高いクーポンがもらえるが、下回ればゼロに近いクーポンしかもらえない。
このように2種類のクーポンのどちらかになる場合、デジタルクーポンという。
元本償還について
満期の元本償還は、だいたい次の2種類がある。
・プット償還
・フォワード償還
プット償還は、満期に株価が行使価格を下回れば、行使価格と株価の差分に応じて元本を失うものである。投資家はプットオプションを売っていることになる。発行体はプットオプションを買っていることになり、満期に株価が行使価格を下回っていれば権利行使する。それによって投資家が損失を被る。
フォワード償還は、満期に株価が行使価格を上回るか下回るかに限らず、行使価格と株価の差分に応じて元本償還の金額が変化するものである。株価が行使価格を下回れば投資家の損失、上回れば投資家の利益、となる。
ノックイン条項
ただし元本償還については、ノックイン条項が付いていることが多い。満期までの間ずっと株価をモニタリングして、ノックイン価格(ノックインバリア)を一度でも下回れば、満期のプット償還が発生したり、満期のフォワード償還が発生する。特にフォワード償還のタイプについては、ノックイン条項が付いていないケースはあまりないだろう。
ノックイン価格を十分低く設定しておけばノックインのリスクは低くなるので、クーポンに上乗せするプレミアムが小さくなってしまう。そこで、満期のプットやフォワードの行使価格をその分だけ大きくしておくことが多い。こうすることで、ノックインの可能性は低いものの、いったんノックインすると投資家は大きな損失を被る。そのリスクの分だけクーポンにプレミアムを上乗せすることができる。ノックイン条項が付いている場合、投資家はノックイン価格の水準は注意深く見るものの、満期のプット償還やフォワード償還の行使価格はそれほど真剣に見ていないこともあるので、それを逆手に取っているともいえる。
今年2020年はコロナによって株価が一時的に大きく下落し、ノックイン価格にヒットしてしまったケースもあるだろう。その後、株価はV字回復したが、このようなケースであっても、一度でもノックイン価格にヒットしてしまうと、ノックインした状態になり、満期の元本償還で損失を被る可能性がある。
早期償還について
いわゆるノックアウト条項である。
株価がノックアウト価格(ノックアウトバリア)を上回ると早期償還する。
株価が上がり過ぎるとそこでクーポン支払が終了し、元本が額面で償還される。投資家はそこから先のクーポンをもらえず、代わりの投資先を見つけないといけなくなる(再投資リスク)。
これによって投資家はノックアウトオプションの形で早期償還リスクをとっているため、その分だけクーポンの条件を良く見せることができる。
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