【仕組債の仕組みとカラクリ】ノックインデュアルカレンシー債とは

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デュアルカレンシー債の復習

  • 払い込みは円建て
  • クーポンも円建て
  • 元本償還が外貨になる可能性がある

というのがデュアルカレンシー債。
多いパターンとしては、満期で為替が行使レートよりも円高になっていると外貨で償還されてしまうもの。
その中でも元本償還はフォワード型、プット型、ギャッププット型に分かれることを見てきた。

今回はさらにその派生形として、ノックイン条項が追加されたものを見ていく。

ノックインデュアルカレンシー債

デュアルカレンシー債にノックイン条項が付いたものをノックインデュアルカレンシー債という。

ノックイン条項

ノックイン条項とは、

  • 為替レートの動きをモニタリングし続け、
  • 一度でもバリアレートを下回ったら、
  • 満期の元本償還において、
    • フォワードが発生する
    • プットオプションが発生する
    • または、ギャッププットオプションが発生する

という条項である。これは通常のノックインオプションと同様である。ノックインしない限りはオプションが存在せず、権利行使される心配はないが、ノックインした場合はオプションが発生する。

デュアルカレンシー債ではフォワード型はあまりないと思われるが、ノックインデュアルカレンシー債ではフォワード型も見受けられる。

用語としては、

  • ノックインした場合に、
    • フォワードが発生するものをフォワード償還
    • プットオプションが発生するものをプット償還
    • ギャッププットオプションが発生するものをギャッププット償還

などと呼ぶ。デュアルカレンシー債と同様に、満期の元本償還の種類にいくつかパターンがある、というわけだ。

バリアモニタリングの種類

さらにパターン分けとしては、ノックイン条項で為替をモニタリングする頻度が2種類に分かれる。

  1. 離散参照型(3か月ごとなど定期的にレートを参照)
  2. 連続参照型(日中のレート変動も含めて参照)

日経平均リンク債などの株価参照型だとノックインは2.の連続参照型が多いが、為替のノックインでは1.の離散参照型のケースも多い。たいていクーポン利払日の10営業日前のスナップショットで為替レートを参照し、そのレートがバリアレートを下回ったかどうかを確認する。もちろん連続参照型の方がノックインする確率は高まる。

フォワード償還の例

  • 3か月ごとにドル円を参照し、90を一度でも下回ったらノックインする
  • ひとたびノックインしたら、満期の元本償還は、円建て元本を110(払い込み時のスポットレート)で割ったドル建て元本で償還される

フォワード償還の場合は、ノックインしたら必ず満期はドル建てで償還されるのが特徴である。注意として、たとえノックインしたとしても、満期までの間に為替レートが急上昇して、行使レートである110を上回った場合は、例えば115で円転できるので、投資家が逆転勝利できる場合もある。しかしバリアを一度でも下回ったということは為替がかなり円高に振れてしまっているので、そこから逆転できる可能性は低いと言わざるを得ない。

フォワード償還という名前は、投資家にとって行使レート110の外貨フォワードの買いになっているからである。外貨の買いだから、円高・外貨安になってしまうと損失が出る。

プット償還の例

  • 3か月ごとにドル円を参照し、90を一度でも下回ったらノックインする
  • ひとたびノックインしたら、満期の元本償還は、
    • 満期の為替が110を下回っていたら、円建て元本を110(払い込み時のスポットレート)で割ったドル建て元本で償還される
    • 満期の為替が110を上回っていたら、円建て元本の額面で償還される

プット償還の場合は、たとえノックインしたとしても、満期において為替が行使レートよりも円安になっていると、そのまま円建て元本で償還される。すなわち払い込んだ資金がそのまま返ってくる。しかし、もしノックインして、かつ、満期の為替が行使レートよりも円高になっていると、安い外貨で返ってきてしまい、元本が毀損する。これは投資家サイドから見れば、まさに外貨プット円コールの売りである。外貨が円に対して安くなると権利行使されてしまい、損失を被ることになる。

ギャッププット償還の例

  • 3か月ごとにドル円を参照し、90を一度でも下回ったらノックインする
  • ひとたびノックインしたら、満期の元本償還は、
    • 満期の為替が100を下回っていたら、円建て元本を110(払い込み時のスポットレート)で割ったドル建て元本で償還される
    • 満期の為替が100を上回っていたら、円建て元本の額面で償還される

ギャッププット償還の場合は、プット償還と似ているが、異なるのは、オプションが権利行使されるトリガーとなるレートが、より低く(円高に)なっている点だ。よってプットの場合に比べて権利行使される確率は下がるが、ひとたび権利行使されると、いきなり大きな損失が発生する。仮に為替が100ちょうどだったとしても、110と100の差である10がいきなり損失になってしまうわけである。

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