【仕組債の仕組みとカラクリ】キャップ付フローター債とは

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キャップ付きフローター債の仕組み

キャップ付きフローター債とは、変動金利のクーポンに上限が付いているものである。また、たいてい早期償還条項(コーラブル条項)が付いている。

名前としては、
・キャップ付きフローター債
・キャップトフローター債
・キャップドフローター債
・コーラブルキャップ付きフローター債
など、いろんな言い方があるが、どれも同じものを指している。

クーポンについて

キャップ付きフローター債のクーポンは以下のような形をしている。

\(F \leq L_i + s \leq C\)

\(F\) はクーポンの下限であり、0%と設定されることが多い。ゼロフロアである。
\(L_i \) はLIBORであり、変動金利の部分である。
\(s\) はスプレッドであり、水準はあらかじめ固定される。
\(C\) はクーポンの上限であり、キャップともいう。キャップ付きフローター債の名前の由来である。

変動金利が上がるほど多くのクーポンを受け取れるが、キャップが付いていることによって、それ以上はもらえるクーポンが頭打ちになる。これは投資家にとっては不利な条項である。投資家は発行体に金利キャップを売っていることになる。

一方で、クーポンにフロアが付いていることによって、変動金利がマイナスに行ってもマイナスの受け取り、すなわち支払いが発生しない、というのは投資家にとって有利な条項である。投資家は発行体から金利フロアを買っていることになる。

このようにキャップはマイナスの価値、フロアはプラスの価値をもつので、ある程度は互いに相殺されることになる。

早期償還について

キャップ付きフローター債についても、コーラブル債やリバースフローター債と同様、早期償還条項が付いている。たいてい権利行使可能日が複数あるので、マルチコーラブル(バミューダンコーラブル)である。マルチコーラブルとは、複数ある権利行使可能日の中から、発行体が自分にとって都合の良いタイミングを選んで早期償還できる条項である。クーポンが6か月ごとの支払いであれば、権利行使可能日はたいてい6か月ごとや12か月ごとに設定される。

都合の良いタイミング、というのはつまり、市場実勢の金利が下がってきたときである。金利が下がってきた場合、いったん借金を返済して、市場実勢の低い金利で借金をし直した方がいい。すなわち発行体にとって借り換えのメリットが生じたときに早期償還となる。

発行体が早期償還の権利を持っているわけなので、投資家は金利オプションを発行体に売っていることになる。これによって受け取るはずのプレミアムがクーポン条件に織り込まれるので、表面上のクーポンが魅力的に見えるように作られている。ここで、投資家が売っている金利オプションは、キャップ付きフロータースワップを原資産とするバミューダンスワップションである。これを評価するには金利の期間構造モデルを使って、ツリーやグリッド積分といった数値計算が必要になる。

キャップとスワップションの中間のようなもの

ここでは単純化のため、クーポンにフロアが付いていないと仮定する。

クーポンに付いているキャップに着目すると、
変動金利が上がるとオプション価値が出てきて、
・変動金利が下がるとオプション価値がゼロに近づく、
ということになる。
金利が十分に低いと、キャップの価値がなくなる。

それに対して、早期償還条項のために組み込まれているスワップションに着目すると、既に見てきたように、
・金利が上がるとオプション価値がゼロに近づいていき、
金利が下がるとオプション価値が出てくる、
ことになる。金利が下がると発行体にとって借り換えのメリットがあるため、早期償還することの価値が出てくる。

以上から、
・金利が上がるキャップの価値は出てくるがスワップションの価値はなくなる
・金利が下がるとキャップの価値はなくなるがスワップションの価値は出てくる

ということになる。
つまり、キャップ付きフローター債に組み込まれているオプション性は、
金利が上がるとキャップのように振る舞い、
金利が下がるとスワップションのように振る舞う、

ということである。

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