【マルチイールドカーブ】プロジェクションカーブとは

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いろんな呼び方がある

  • プロジェクションカーブ (projection curve)
  • フォワードカーブ (forward curve)
  • フォワーディングカーブ (forwarding curve)
  • フォアキャストカーブ (forecast curve)
  • フォアキャスティングカーブ (forecasting curve)

などなど、いろんな呼び方があるが、どれも同じものを指している。

簡単に解説

プロジェクションカーブとは、将来の変動金利の期待値を求めるのに使うイールドカーブである。

将来にならないとわからない変動金利の値は、期待値を求めることで評価する。変動金利としてはここではLIBORなどの単利の金利を考える。この単利の期待値が仮に以下の形で表現されるとした場合の \(\{D(t_i)\}_i \) を並べたものをプロジェクションカーブと呼ぶ。

\(\mathrm{E}[L(t_i )] = \frac{1}{(t_{i+1} – t_i )}\frac{D(t_i ) – D(t_{i+1})}{D(t_{i+1})}\)

つまり順番としては、先に変動金利の期待値が求まり、それを用いてディスカウントファクター「のようなもの」である \(D(t_i)\) が逆算される。では変動金利の期待値はどう求めるのかというと、マーケットから取得できるスワップレートなどから逆算することになる。

ここで重要なのは、上記の期待値から逆算で求まるディスカウントファクター「のようなもの」 \(D(t_i)\) は、将来キャッシュフローの現在価値への割引には「使わない」、という点だ。これは将来の変動金利の期待値を求めるためだけのものであり、\(D(t_i)\) それ自体には経済的な意味はない。プライシングに必要となるのは変動金利の期待値のみであり、\(D(t_i)\) は直接的には必要ない。

では何のためにあるかというと、イールドカーブはシステムの仕様上、ディスカウントファクターの形で保持することが多く、(将来キャッシュフローの割引に使う)通常のディスカウントカーブと同じように扱うために、プロジェクションカーブもディスカウントファクターの形に直している、というだけである。実際にはディスカウントファクターの対数 (log) の形で保持されることも多い。

上記の期待値の式

\(\mathrm{E}[L(t_i )] = \frac{1}{(t_{i+1} – t_i )}\frac{D(t_i ) – D(t_{i+1})}{D(t_{i+1})}\)

は、シングルカーブ時代のフォワードLIBORを求める式である。ここで言うシングルカーブとは、現在価値への割引に使うディスカウントカーブと、変動金利の期待値を求めるのに使うプロジェクションカーブが同一である、という意味だ。シングルカーブ時代においては、上記の式における \(D(t_i)\) には元本が1の割引債の価格という、経済的な意味があった。しかし変動金利の指標はLIBORだが、割引金利は担保通貨のOISカーブを用いる、というケースが増えたので、LIBORの期待値を求めるためにしか使わない \(D(t_i)\) には、「将来キャッシュフローを割り引く」という意味合いがなくなった。

ところがLIBOR廃止によって、担保付き取引の割引に使うRFRカーブがLIBORの後継金利となった。これによって、将来キャッシュフローを求めるのもRFRカーブ、担保付き取引の将来キャッシュフローを割り引くのもRFRカーブ、ということで、そういう意味ではシングルカーブ(ディスカウントカーブ)に逆戻りするかのように見える。

しかし通貨ベーシスは消えないわけなので、担保通貨ごとに異なるディスカウントカーブを用いるという、「割引のマルチカーブ」は消えずに残ることになる。

加えて、将来的にはフォワードルッキングなターム物RFRの流動性が出てきて、ターム物RFRスワップから作ったターム物RFRカーブで、将来のターム物RFRの期待値を求める、という状況になる可能性がある。この場合、担保付き取引の割引がターム物「ではない」RFRカーブのままであれば、
・割引は翌日物RFRカーブ
・変動金利の期待値はターム物RFRカーブ
で求めるから、結局マルチカーブに戻ることになる。

さらに言うと、同じターム物RFRでも3か月物と6カ月物の間にテナーベーシスが発生して、テナーごとに異なるプロジェクションカーブを作る必要が出てくるかもしれない。これも「テナーごとに異なるイールドカーブを作る必要がある」という意味でのマルチカーブである。

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