クロスカレンシースワップを時価評価する方法は?

はじめに

通貨swapのことをクロスカレンシースワップともいうが、これの時価評価を見ていく。

クロスカレンシースワップとは、異なる通貨の金利を交換するスワップで、通常は、取引開始時と終了時に元本交換がある。元本交換がない通貨スワップのうち、固定金利どうしを交換するものを特にクーポンスワップという。

時価評価の手順

基本的には金利スワップと同じである。

  1. イールドカーブを生成する
  2. 生成したイールドカーブを用いて時価評価する

手順1はマーケットレートからイールドカーブを作る。
これを材料として使い、手順2でイールドカーブを補間してディスカウントファクター(DF)とフォワードレートを求め、割引現在価値を求める。

以下では例として、JPY担保のUSD/JPYの通貨スワップを時価評価する場合を取り上げる。

イールドカーブを生成する

評価にはディスカウントカーブとプロジェクションカーブが必要になる。

ディスカウントカーブは、USDサイドとJPYサイドで異なるイールドカーブが必要になる。USDサイドはJPY担保USDディスカウントカーブ、JPYサイドはJPY担保JPYディスカウントカーブすなわちJPY OISカーブである。

まずJPY OISカーブはJPY OISレートから作る。短期ゾーンは利払いが満期1回のみのOISレートを使い、長期ゾーンは通常のOISレートを使う。

次にJPY担保USDディスカウントカーブを作る。そのためには前段階として、先にUSD担保JPYディスカウントカーブが必要になる。担保通貨とキャッシュフロー通貨が異なる場合、通貨ベーシスを評価に織り込む必要があるが、市場の通貨ベーシスはUSD担保前提のクォートしかないため、JPY担保USDディスカウントカーブを直接作ることはできない。このため、USD担保JPYディスカウントカーブを経由して作ることになる。

作る順番は、
1.USD OISカーブ
2.USD LIBOR3Mカーブ
3.JPY OISカーブ
4.JPY LIBOR6Mカーブ
5.JPY LIBOR3Mカーブ
6.USD担保JPYディスカウントカーブ
7.JPY担保USDディスカウントカーブ
となる。USD(1から2)と、JPY(3から5)はどちらから先に作ってもよい。

7.のJPY担保USDディスカウントカーブは、為替フォワードがUSD担保とJPY担保で同じになるように逆算する。以下を参照。

生成したイールドカーブを用いて時価評価

あとは金利スワップと同様、受けと払いのLegごとに割引現在価値を求める。
注意すべきなのは、通貨スワップの場合、元本交換のキャッシュフローも含めないといけない点である。

金利キャッシュフローの時価
=元本×(固定金利またはForward Rate)×付利期間×DF

元本交換キャッシュフローの時価
=元本×DF

ここで、金利の時価では、固定金利の場合と変動金利の場合で計算が異なる。
・固定金利の場合は契約条件の固定金利をそのまま代入すればよい。
・変動金利の場合は生成済みのプロジェクションカーブを補間してForward Rateを求めないといけない。

プロジェクションカーブは金利インデックスごとに異なるカーブを選択する。LIBOR6M, LIBOR3M, TIBOR6M, TIBOR3Mなど、これらはどれも別の金利インデックスなので、別のプロジェクションカーブを用いてフォワードレートを求める。

上の式でDFとあるのはディスカウントファクターのことで、これは生成済みのディスカウントカーブを補間して求める。
重要なこととして、ディスカウントカーブは評価対象の取引の担保通貨によって異なるカーブを選択しないといけない。
担保通貨は通常、取引相手ごとに締結しているCSAという担保契約で明確に決まっている。
注意すべきなのは、たとえ同じキャッシュフローであっても、担保通貨が異なるとDFが違う値になるので、結果として時価が異なってくる、ということである。

元本交換キャッシュフローの時価は、DFさえ求めれば、それに元本をかけるだけで得られる。元本「交換」というわけなので、例えばUSD/JPY通貨スワップであれば、USDの元本キャッシュフローの時価と、JPYの元本キャッシュフローの時価をネッティングしないといけない。

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