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参考文献

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時価評価方法については以下を参照。

クーポンスワップの時価評価(プライシング)方法 | Quant College

回答

クーポンスワップとは

クーポンスワップとは、異通貨の固定金利同士を交換する、元本交換なしの通貨スワップである。通貨スワップの特殊ケースがクーポンスワップ、ということになる。為替フォワードではなく通貨スワップの一種ということで、つまり、一回きりの交換ではなく、定期的に長期間、交換し続ける契約である。

通貨スワップには以下の3パターンがある。

  • 変動金利と変動金利を交換する
  • 変動金利と固定金利を交換する
  • 固定金利と固定金利を交換する

これに加えて、さらに、スポット日と満期日に元本交換をするかしないか、が入ってくる。

このうち、

  • 固定金利と固定金利を交換する
  • 元本交換をしない

というタイプの通貨スワップには特別に「クーポンスワップ」という名前が付いている。

ネットでは単に「元本交換なしの通貨スワップ」と書いていることもあるが、実務上は、元本交換なしの通貨スワップのうち、

  • 変動金利どうしを交換するものはベーシススワップ(通貨ベーシススワップ)と呼ぶ
  • 変動金利と固定金利を交換するのはあまり見かけない(一方、元本交換ありで円の変動金利と外貨の固定金利を交換する通貨スワップはよく見かけるが、元本交換ありなのでクーポンスワップとは呼ばない)
  • 固定金利どうしを交換するものはクーポンスワップと呼ぶ

というわけで、実務上はクーポンスワップというと、固定金利どうしの場合に限られる。

固定金利ということは、円貨と外貨の両サイドの受け払い金額が契約時に確定していることになる。「金利」というよりかは、「金額」を交換している、と考えたほうがいい。円貨の固定金額と外貨の固定金額を交換するスワップ、というわけである。

ちなみに:通貨ベーシススワップとは

ちなみに、
・変動金利と変動金利を交換する
というタイプの通貨スワップには特別に「通貨ベーシススワップ」という名前が付いている。

さらに、「通貨ベーシススワップ」の特別な場合として、
・3か月ごとに元本交換し直す(足元のスポット為替でドル元本の金額を更新していく)
というタイプの通貨ベーシススワップには、MtM通貨スワップ、Mark-to-Market通貨スワップ、Notional Reset通貨スワップ、Resettable通貨スワップなどという名前が付いているが、これらも全て同じ商品を表す用語である。

何に使うのか:クーポンスワップの仕組み

外貨の固定金額キャッシュフローに適用される為替レートを長期間、固定化するのに使う。

  • 輸出企業なら、売り上げを外貨で受け取るので、外貨払い・円貨受けのクーポンスワップを行えば、外貨の受け払いが相殺されて、実質的に円貨の受け取りにできる。
  • 輸入企業なら、仕入れを外貨で支払うので、外貨受け・円貨払いのクーポンスワップを行えば、外貨の受け払いが相殺されて、実質的に円貨の支払いにできる。

例えば、

  • 1万ドルを受け取る
  • 100万円を支払う

ことを3か月ごとに5年間(20回)繰り返す、
というのがクーポンスワップである。

上記の例であれば、1万ドルと100万円を5年間交換するので、5年間の為替レートを100円/ドルで固定化したことになる。

クーポンスワップのメリットとリスク

メリット

  • 円貨ベースでの金額を固定化できる(為替リスクのヘッジ)
  • 為替フォワードと違って長期間の為替リスクをまとめてヘッジできる

リスク

  • 為替を固定化してしまうので、仮に自社にとって有利な方向に為替が動いても為替差益が得られない
  • 1年以上の長期契約になるが、途中で解約したくなってもできない
    (無理に解約しようとするとペナルティがかかる)

先ほどの例で考える。

  • 1万ドルを受け取る
  • 100万円を支払う

ことを3か月ごとに5年間(20回)繰り返す、という例である。
これは5年間の為替レートを100円/ドルで固定化していることになる。

輸出企業の場合

輸出企業は外貨を受け取るので円高・外貨安になると、円に直したら損をする。そこで円高ヘッジのために外貨払い・円貨受けのクーポンスワップを行う。上記の例であれば、これによって交換レートが100円/ドルで固定されるので、1ドル100円より円高になっても大丈夫というわけである。

逆にリスクとしては、為替が円安に振れた場合である。1ドル120円まで円安に振れたとすると、クーポンスワップをしていなければ、受け取った外貨を円に直せば1ドル120円で円に直せるはずなのに、クーポンスワップのせいで1ドル100円に固定されてしまっているので、円建てベースの受け取りが目減りしてしまう。

輸入企業の場合

輸入企業は外貨を支払うので円安・外貨高になると、外貨建てベースで見れば一定額の支払いであっても、円建てベースで見ると支払いが増えてしまう。そこで円安ヘッジのために外貨受け・円貨払いのクーポンスワップを行う。上記の例であれば、これによって交換レートが100円/ドルで固定されるので、1ドル100円より円安になっても大丈夫というわけである。

逆にリスクとしては、為替が円高に振れた場合である。1ドル80円まで円高に振れたとすると、クーポンスワップをしていなければ、円をドルに直す際、ドル建てベースで見ると大きな金額になる。このため支払い原資となる円が安く済むなずなのに、クーポンスワップのせいで1ドル100円に固定されてしまっているので、円建てベースの支払いが必要以上に増えてしまう。

クーポンスワップと為替予約の違い

上記の例をもう一度見てみると、

・1万ドルを受け取る
・100万円を支払う
というのを3か月ごとに5年間(20回)繰り返す

ということは、為替予約を20個まとめて契約しているのと同じである。ただしここで重要なのは、為替予約の予約レートが20個で全て同じという点である。これが「フラット為替」と呼ばれる理由だ。普通の為替予約であれば、予約レートは満期日によって異なる水準になる

満期日によって予約レートがどう変わるかは、フォワード為替レートによって決まる。フォワード為替レートは為替フォワード市場の需給で決まっており、変動要因を分解すると、2通貨の金利と、通貨ベーシスに分けられる。

ざっくり言うと、ドル円であればドルの方が円よりも高金利というのが一因となって、満期が長くなるほどフォワード為替レートは円高になる。よって予約レートは、為替予約の満期が長くなるほど低いレート(円高)になる。

普通の為替予約を1件ずつバラバラに契約すると、1件ずつ予約レートが異なり、満期が長くなるほど円高になる。このように満期が長くなるほど下がっていく予約レートを、まとめ売りする為替予約全てに対して同じレートにならす(平均化する)ことによって「フラット化」したものが、クーポンスワップである。

クーポンスワップと、フラット為替、長期為替予約、包括的長期為替予約の違い

クーポンスワップとフラット為替は同じものだと思っておけばよい。

多数の為替予約を1つのパッケージにしてまとめ売りするもの
=クーポンスワップ
=フラット為替
=長期為替予約
=包括的長期為替予約

であり、これらは全てクーポンスワップと同じ経済効果を持つ。
同じものを指しているのだが、人によってまたは文脈によって違う用語を使っているだけである。

クーポンスワップは金利系の人が使う用語で、実際に金利系のシステムにブックされるが、フラット為替や長期為替予約は為替系の人が使う用語で、実際に為替系のシステムにブックされる。包括的長期為替予約はヘッジ会計の文脈で使われる用語のようだ。

注意すべきなのは、金利系のシステムと為替系のシステムで評価ロジックが異なることが多い、という点である。特にイールドカーブ生成や為替のフォワードカーブ生成のロジックが異なると、クーポンスワップとフラット為替で同じ商品なのに、ブックされるシステムが違うことが原因で時価評価が異なる、ということが起こる

クーポンスワップの元本金額には意味がない

通常の通貨スワップであれば、
・何ドルとか何円とかの「金額」ではなく、
・何%とかの「金利」でクーポンの水準を指定する
のだが、クーポンスワップは特殊で、受けも払いも固定金利なので、受けも払いも「金額」ベースで指定することが多い。

クーポンの金額は、
・金利(年率~%)
・付利期間(3か月ならざっくり0.25)
・元本金額
を掛け算した結果だが、クーポンスワップの場合は受けも払いも固定金利なので、金利、付利期間、元本金額、が全て事前に決まっていることになる。
このため、これら3つを掛け合わせたクーポンの金額が事前にわかっているので、実際に受け払いするこの「金額」で取引条件を指定する。

そういう意味では、クーポンスワップでは「元本金額」には意味がない。受けも払いも固定金利なので、受けの金額も払いの金額も既に決まっており、その金額を金利と元本金額の2つに分解することに意味がないからである。

特殊条項を追加した様々なクーポンスワップがある(エキゾチッククーポンスワップ)

2通貨の固定金額を交換する元本交換なしの通貨スワップ、というのがクーポンスワップだが、これは最もシンプルな(プレーンバニラな)クーポンスワップであり、実際には特殊条項を追加した(エキゾチックな)クーポンスワップが多数取引されている。

  • 為替が円安方向に行き過ぎると自動解約される、ノックアウト条項を追加したもの(ノックアウトクーポンスワップ)
  • 為替が円高方向に行くと、より一層不利な方向に交換レート(予約レート)を変更されてしまうもの(ギャップ条項付クーポンスワップ)
  • 為替が円高方向に行ったときだけ、元本(つまり交換する金額)が2倍や3倍に変更されてしまうもの(レバレッジ条項付クーポンスワップ、レシオフォワード)
  • 為替が交換レートより円安に行った回数や、その際の(為替レート-交換レート)を累積していき、所定の値に到達したら自動解約されるもの(ターゲットノックアウト条項付クーポンスワップ、ターフ、TARF)

参考文献

スワップ取引のすべて(第5版)

FX Options and Structured Products (The Wiley Finance Series) (English Edition)

FX Barrier Options: A Comprehensive Guide for Industry Quants (Applied Quantitative Finance) (English Edition)

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