将来に通貨スワップを行う権利を顧客に与える取引について、市場で増えているのは、約定日におけるスポット為替で元本交換し、かつ、通貨ベーシスも約定日における満期三ヶ月の値を用いるものだ。
この通貨スワップションは時価ゼロだが、
もし仮に、通貨ベーシスの水準があらかじめ決められていたらどうだろうか?
この場合、あらかじめ決められた通貨ベーシス3Mのレートと、将来のフィキシング日における市場実勢の通貨ベーシス3Mのレートを比べて、権利行使を判断することになる。
そのため、この通貨スワップションは時価がゼロではなく、金利オプションとしてプライシングする必要がある。
プライシングとしてはキャップレットやフロアレットの通貨ベーシス版であり、通貨ベーシス3Mのオプションとして評価することになるだろう。
しかしながら、通貨ベーシス3Mなる金利インデックスには、それと固定レートを交換するスワップレートもなければ、キャップフロアなどのボラティリティもない。
このため、通貨ベーシス3Mのフォワードレートが計算できないし、当然、通貨ベーシス3Mのフォワードボラティリティも計算できない。
このため、キャップレットやフロアレットの評価はできない。
さらに、定額使い放題プランでは、この利払い一回の通貨ベーシススワップションを何回も権利行使できるため、通貨ベーシスのキャップレットやフロアレットのポートフォリオになっている。
これはつまり、キャップフロアの通貨ベーシス版である。
このような取引は評価するのに必要なマーケットレートがないため、ヘッジできないことから、金融機関も取引しようとしないだろう。
そういうわけで、通貨ベーシスはあらかじめ決めておくのではなく、将来の市場実勢で取引してくれるのである。
むしろ、そうしないと、金融機関としては、ヘッジできないリスクを抱えることになってしまう。
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