バリアオプションのプライシング:4つの方法

はじめに

バリアオプションのプライシング方法について、選択肢をざっくり見ていく。

  1. Black-Scholesモデルの解析解
  2. Vanna-Volga法で解析的に求める
  3. Local Volatilityモデルを用いる
  4. Stochastic Local Volatilityモデルを用いる

1.を使っているのは日系でも地銀くらいである。
2.を使っているのは証券会社以外で、メガバンク、準メガ、メガ信託、といった大手邦銀のあたりだろう。
3.を使っているのは大手日系証券会社である。日系でも一部では4.を使っているか、4.を開発中ではないかと思われる。
4.を使っているのは大手外資系証券会社である。
以下では数式なしでざっくり概要のみ説明する。

1.Black-Scholesモデル

BSモデルを使っているのは地銀くらいであり、デリバティブ業者がBSモデルを使うことはない。

BSモデルは、何か他のプライシングモデルで求めた価格を、Blackボラティリティに換算するためだけに使う、いわば「価格単位の変換公式」としてしか使わない。なぜなら、BSモデルでは、スマイル、すなわち市場がインプライしている確率分布を織り込むことができず、市場のバニラオプションと整合的に評価することができないからである。

Black-Scholesモデルにおけるバリアオプション価格の解析解は多くのテキストに載っている。たとえば以下。

2.バンナボルガ法

バンナボルガ法(バンナボルガモデルと呼ばれることもある)はスマイルを簡便的に反映する方法として、通貨オプションで古典的に用いられている。

Black-Scholesモデルを基礎としてそこからのずれを求める、という発想になっている。評価対象となる任意のストライクのバニラオプションについて、そのVega、Vanna、Volgaの3つの感応度(Greeks)を再現するようなATM、25デルタコール、25デルタプットの3つのオプションによるヘッジ比率を求める。

直観的に理解しやすいほか、3×3の行列演算のみで高速にプライシングができることから、トレーダーによく用いられている。

もともとはバニラオプションの評価に用いられていたが、簡便的にバリアオプションに応用しているケースも見られる。Vanna-Volga法それ自体がある意味で簡便法なわけだが、その方法を簡便的にバリアオプションにも使ってしまおうというわけである。

具体的には、Vanna-Volga法では、Black-Scholesベースの価格からの調整項を別途求めるのだが、ノックアウトオプションの場合であれば、この調整項にバリアのノータッチ確率(満期までにバリアに到達しない確率)を乗じることで、バリアの存在を考慮する。ノータッチ確率を求めるには、原資産価格に何らかの確率分布を仮定する必要があるが、Vanna-Volga法はBlack-Scholesモデル(BSモデル)をベースに作られているため、ノータッチ確率はBSモデル前提の解析式で求める。
・プライシング自体はBSモデルからのずれを求めようとしているのだが、
・その中で使うノータッチ確率はBSモデルで求める、
ということで、ロジックの整合性に難があり、矛盾が生じているともいえる。

Vanna-Volga法については以下の本に詳しい説明がある。

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3.ローカルボラティリティモデル

ローカルボラティリティモデルは経路依存性のある商品に広く使われているモデルである。ボラティリティ部分が時間と原資産価格の確定的な関数と仮定する。

この確定的な関数の部分をローカルボラティリティ関数というが、これを求めるにはマーケットのボラティリティスマイルを補間・補外するために、何らかのスマイルモデルがインプットとして必要となる。したがって、ひとくくりに「Local Volatilityモデル」といっても、インプットとして用いるスマイルモデルが異なれば、結果として得られるローカルボラティリティ関数も違うものとなり、プライシング結果も異なる。この点をきちんと認識していない人もけっこういるので注意。

一般的なスマイルモデルはアセットクラスによって異なり、会社ごとにオリジナルのモデルを使っていることも多い。為替系であれば、Vanna-Volga法、Hestonモデルあたりが多く、SABRモデルは少ない。他にも、無裁定を保証する(特に、確率密度関数がプラスになることを保証する)無裁定補間モデルを用いていることも多い。無裁定補間モデルについても、例えばNavil Kahaleの方法や、Andreasen-Hugeの方法など、非常に多くの種類がある。

いったんローカルボラティリティ関数が計算できれば、バリアオプション等の経路依存商品の評価は、PDEを解くか、モンテカルロ法によるか、のどちらかになる。これら数値計算法の選択はどちらでもいいわけだが、原資産がひとつであればPDEを解くのが自然であろう。

BSモデルやVanna-Volga法とは違って、将来時点から将来時点の遷移確率が反映されるが、スマイルのダイナミクスが不自然な形になり、バリアオプションのマーケットプライスと整合的ではなくなる恐れがある。

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4.確率ローカルボラティリティモデル

これはローカルボラティリティモデルと確率ボラティリティモデルの良いとこ取りをしよう、というモデルである。Stochastic Local Volatility Model、あるいは、Local Stochastic Volatility Model、とも呼ばれる。ボラティリティ部分がローカルボラティリティ部分と確率ボラティリティ部分の積で書けると仮定する。ローカルボラティリティ部分はレバレッジ関数と呼ばれる。

確率ボラティリティ部分にどのような関数形を仮定するかは自由だが、実務で用いられているのは、多くはHeston型である。この確率ボラティリティ部分に用いられるHestonモデルをまずキャリブレーションしてパラメーターを定め、それを踏まえて第二段階としてローカルボラティリティ部分をキャリブレーションすることになる。

ローカルボラティリティと確率ボラティリティのミックス具合をコントロールするパラメーターとして、Mixing Weigntが追加されており、これをマーケットのバリアオプション(ダブルノータッチなど)のクォートに合うように調整する。イメージとしては、
ローカルボラティリティモデルだとバニラオプションの市場価格に含まれる情報しか用いないが、
確率ローカルボラティリティモデルになると、バニラオプションに加えてエキゾチックオプションの市場価格に含まれる情報も用いる、
という感じである。

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参考文献