【ストックオプション/仕組債】ノックインプットとノックインフォワードとは【わかりやすく】

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はじめに

本記事では株式オプションを前提に話を進めていく。

株式オプション、特にベンチャー企業におけるストックオプションなどで見られる商品にノックインフォワードがある。

株価連動のノックイン条項付き仕組債には、ノックインした場合の元本償還タイプとして以下の2種類がある。

  • ノックインしたら満期の元本償還がプットオプションになるもの
    (ブル型の仕組債の場合、投資家はノックインプットの売りサイド)
  • ノックインしたら満期の元本償還がフォワードになるもの
    (ブル型の仕組債の場合、投資家はノックインフォワードの売りサイド)

メジャーな株式系仕組債については以下の記事を参照。

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ノックインフォワードはノックインプットとノックインコールの組み合わせで複製できる(シンセティックフォワード)。
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以下では先にノックインプットについて見ていく。

ノックインプットとは

ノックインプットとは、株価がバリア価格に到達するとプットオプションが発生するものである。逆に株価がバリア価格に到達しないと、オプションが発生しないので、いかなる状況でも権利行使することができない

株価がノックインバリア価格に到達することをノックインという。
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ノックインバリアはたいてい契約時の株価よりも低い位置に設定される(ダウンサイドバリア)。株価が下がりすぎるとダウンサイドバリアにヒットし、ノックイン条項が発動する。

ノックインプットは、ノックイン条項が発動したら普通のプットオプション(バニラプットオプション)に変化するものであり、ノックイン後は普通のプットオプションとして扱われる

ノックインフォワードとは

個別株の商品でよくあるものにノックインフォワードがある。
これはバニラコールオプションの買いとノックインプットの売りの組み合わせである。

ノックインフォワードの買い=バニラコールの買い+ノックインプットの売り

ダウンバリアを株価が下回ると、ノックイン条項が発動して(バニラ)プットオプションの売りが発生する。
すると、ノックイン後は、

バニラコールの買い+バニラプットの売り=通常のフォワードの買い

となる。

このようにコールの買いとプットの売りで合成したフォワードのことをシンセティックフォワードということがある。

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ストックオプションでよく見る「権利行使が義務になる」とは

しかしストックオプションの契約書には、ノックイン後にフォワードになるとは書かれておらず、コールの権利行使が義務になる、と書かれている

権利行使が義務になるとは、株価がストライク(=権利行使価格)を上回っていても、下回っていても、必ずコールオプションを行使しなければならない、ということである。
したがって、ペイオフは株価からストライクを差し引いたものであり、これはフォワードそのものである

株価がストライクを上回っていれば、当然、権利行使して利益が出る。
しかし、株価がストライクを下回っていれば、普通のコールオプションでは権利行使する必要がない。損失が出るからだ。

ところが、権利行使が義務になると、損失が出る状況でもお構い無しに行使しなければならない
オプションは権利だが、フォワードは義務だからである。

モンテカルロシミュレーションによるストックオプション評価

ストックオプションのように個別株だと、ヒストリカルから推定したボラティリティが年率70%などと非常に高いため、シミュレーション上、ほとんどのシナリオでこのダウンバリアにヒットするが、わずかな確率で、ヒットしない場合がある。

ノックインしない場合は普通のコールであり、ダウンバリアにヒットしていないということは株価が高く推移しているので、満期が長いと、かなり大きなプラスのペイオフが得られる

このように、ノックインしない確率はかなり低いのだが、実際にノックインしなかった場合、かなり大きなプラスのペイオフが発生する
このようなケースは、シミュレーション結果が安定しなくなる典型例である。

しかしながら、行使は満期でしか行わないと仮定すれば、ブラックショールズモデルで解析解が使える。つまり、バニラコールとノックインプットをどちらも解析解で評価して、その差分をとればノックインフォワードの評価となる。もちろん実務上は、ノックインプットなどのバリアオプションをブラックショールズモデルで評価することは一般的ではない。
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しかし実際には、行使可能期間ならいつでも行使できるとか、他にもいろいろな条件が付いているため、ブラックショールズモデルで評価することはそもそも不可能ということで、シミュレーションせざるを得ない場合も多い。
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