LIBOR廃止に向けたイールドカーブの移行対応が本格化

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イールドカーブ移行対応が本格化

LIBOR廃止が年末に迫ってきており、いよいよLIBOR廃止に向け具体的な対応が本格化しているようだ。評価に用いるイールドカーブをRFRベースのカーブに移行することになる。

評価に用いるイールドカーブといっても2種類あり、ディスカウントカーブとプロジェクションカーブである。

ディスカウントカーブは将来キャッシュフローの割引に用いるイールドカーブだ。これは以前からOISカーブが用いられている。有担保であれば契約の担保通貨に応じて通貨ベーシスを反映したOISカーブ、無担保であれば自社のファンディング通貨に応じて通貨ベーシスを反映したOISカーブとなる。

OISレートから直接OISカーブを作っていれば特段変更はないが、通貨によっては変更が生じる。
USDは以前から使われていたFederal Funds Rateを参照するOISレートから、RFRであるSOFRを参照するOISレートに変更することになる。Federal Funds Rateは廃止されないが、今後はSOFRに取って代わられるケースが多いだろう。
EURについても、以前から使われていたEONIAを参照するOISレートから、RFRであるESTRを参照するOISレートに変更することになる。EONIAはLIBORと同じタイミングで廃止されることになっている。

また、OISカーブをLIBORカーブからのスプレッドの形で、つまり、LIBORスワップレートとOIS vs LIBORベーシスの組み合わせで作っていた会社も多く、この場合はインプットレートをOISレートに変更する必要がある。なぜならLIBORスワップレート、OIS vs LIBORベーシスはいずれもLIBOR廃止とともになくなるからである。

デリバティブのエンドユーザーである中堅中小金融機関や事業会社の場合、有担保・無担保いずれの取引もクラシカルなLIBORディスカウントが適用されていることもあるだろう。すなわち金利スワップはLIBORスワップレートから作ったLIBORカーブで割り引き、通貨スワップはLIBORカーブに通貨ベーシスを上乗せしたクロスカレンシーLIBORカーブで割り引く。

この場合は当然のことながら、LIBOR廃止後はLIBORカーブを作れなくなるので、評価に用いる割引カーブを大きく変更する必要がある。
LIBORベースのカーブからOISベースのカーブに変更、
担保通貨に応じて通貨ベーシスを適切に反映できるよう修正、
無担保取引にはOISカーブによる評価からのずれとしてXVAを適用、
といった具合である。

次にプロジェクションカーブについてだが、これは将来に値が確定する(Fixingされる)変動金利の期待値評価に用いるイールドカーブであり、こちらの対応も必要になる。

OISカーブは以前からディスカウントカーブに用いられていたが、実際にOIS自体を取引することはまれであったので、プロジェクションカーブとしてOISカーブを用いることができないシステム仕様になっていることもあるかもしれない。

この場合、将来の翌日物金利の期待値をOISカーブで評価できるよう変更が必要である。特に、初回のキャッシュフローについては、一部のRFRが過去にFixing済みであり、それらを考慮に入れて複利運用されたRFRの期待値をプロジェクションカーブから求める必要がある。この複利運用の部分は事業会社が避けたがっている部分であり、実際、これが一つの原因となり、ローンや債券では後決め複利RFRではなくTORFなどのターム物RFRがフォールバックの第一順位として採用されている。

しかし現状、TORFのプロジェクションカーブを作るのに必要なマーケットレート(TORFスワップレートやRFR vs TORFベーシス)が取得しづらい状況であり、(特に長期の)TORFカーブの構築が困難となっている。TORFにフォールバックされるLIBOR参照のローンや債券について、厳密に正しい時価評価は現状困難ということになる。このようにエンドユーザーからのニーズがあるので、TORF関連のマーケットレートもそろそろ取得できるようになると思われる。

参考文献

Interest Rate Swaps and Their Derivatives: A Practitioner’s Guide (Wiley Finance Book 510) (English Edition)

Interest Rate Derivatives Explained: Volume 1: Products and Markets (Financial Engineering Explained) (English Edition)

Interest Rate Derivatives Explained: Volume 2: Term Structure and Volatility Modelling (Financial Engineering Explained) (English Edition)

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