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解説
既存取引のLiborがRFRに書き換わるタイミングはいつなのか。
これは2段階で考える必要がある。
1、フォールバック条項を契約書に書き加える
2、フォールバックのトリガーが実際に引かれる
この両方がないと、RFRに書き換わらない。
1のみであれば、まだトリガーが引かれておらず、
2のみであれば、そもそもフォールバック条項が契約書に入っていないので、トリガーが引かれても何も変わらない。
1、については、デリバティブ、債券、ローン、証券化商品、といった商品ごとに、具体的な手続きは異なるだろう。
デリバティブに関してはISDAがとりまとめている。
・ISDAのプロトコルを市場参加者が受け入れれば、それで契約書がまとめて一斉に書き換えられ、ISDAの標準フォールバック条項が導入される。
・しかしながら、そもそもOTCなので、二者間で合意さえできれば、ISDAの標準フォールバックとは異なるフォールバック条項を導入することも可能である。
2、については、トリガーは大きく分けて2つある。
⑴公表停止トリガー
⑵公表停止前トリガー
⑴の公表停止トリガーの方がわかりやすいと思う。
これは、cessation trigger と呼ばれており、実際にLiborが公表停止されるとトリガーが引かれて、RFRに切り替わるものだ。
⑴公表停止トリガーはさらに2つに分かれる。
⑴A.
LiborのadministratorであるICEが公表停止を宣言したとき
⑴B.
LiborのregulatorであるFCAが公表停止を宣言したとき
A.の方がわかりやすいと思われるが、
B.については、以前にFCA自身が、自分たちのアナウンスがトリガーになり得るとのコメントがリスク誌に出ており、実際にあり得るトリガーである。
最後に、⑵公表停止前トリガーである。
これについては、pre-cessation triggerと呼ばれており、Liborの水準がもはや市場実勢を反映していない、とみなされたら引かれるトリガーである。
⑵はいまもISDA主導で議論が続けられている。
そもそも公表停止前トリガーを追加しておくことについても賛否両論あるようだ。
加えて、公表停止前トリガーを具体的にどのように定義しておけばいいのかについても、悩ましい問題だ。
そもそも、Liborを市場実勢を反映しているかどうかについて、誰が判断すればいいのか。
ISDAは、ICEやFCA、加えてLCHやCMEなどのCCP、にも意見を聞いているようだ。
参考文献
スワップ取引のすべて(第5版) 実践デリバティブ: Excelでデータ分析 Interest Rate Swaps and Their Derivatives: A Practitioner’s Guide (Wiley Finance Book 510) (English Edition) Interest Rate Derivatives Explained: Volume 1: Products and Markets (Financial Engineering Explained) (English Edition)
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