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ターム物SOFRを使用できる条件がわかりにくい

ターム物SOFRの使用は当局によって制限されている。今回はトヨタの発行した証券化商品にターム物SOFRが使用されたことについて、米国ARRC (Alternative Reference Rate Committee) が苦言を呈しているが、これに関して議論が巻き起こっている。
ARRC’s trivial fight over term SOFR use – Risk.net

デリバティブの場合、ターム物SOFR参照が許されているのは、ターム物SOFR参照のキャッシュ商品(債券やローンや証券化商品など)を直接ヘッジするデリバティブのみである。キャッシュ商品がターム物SOFR参照で、それをヘッジするためにSOFR参照のデリバティブを取引するのはOKということである。

しかし、ではキャッシュ商品がターム物SOFRを参照してよい場合というのはどういう場合か。これがはっきりしないことによって議論が起こっている。

今回問題になっているトヨタの証券化商品 (ABS: Asset Backed Securities) は、証券化商品の裏付け資産である自動車ローンが固定金利であり、ターム物SOFR参照ローンではないにも関わらず、それを裏付けとする証券化商品がターム物SOFR参照である。この点がARRCによって問題視されているようだ。

おそらく議論が起こってしまっている原因は、キャッシュ商品がターム物SOFRを参照できる条件がはっきりしないからだろう(キャッシュ商品の中に証券化商品は含まれる)。ARRCの主張は、キャッシュ商品である証券化商品をデリバティブのように扱っているように見える。すなわち原資産がターム物SOFR参照ならいいが、そうでなければだめだと言っている。トヨタのケースは、原資産が固定金利なのに証券化商品がターム物SOFR参照だからだめだと言っている。

キャッシュ商品ならどんな場合でもターム物SOFRを使っていい、というわけではないのであれば、キャッシュ商品についてもターム物SOFRを使用できる条件が明示される必要があると思われる。

その他の記事

日銀が長期金利の上限を引き上げた政策変更について、Risk.netでは通貨オプションの文脈で取り上げられている。
BoJ policy shift sends traders to hedge downside yen moves – Risk.net
日銀の「実質利上げ」のような政策変更がサプライズで起こったことにより、日米金利差の縮小を材料に、為替は円高に振れた。それと同時に、ドル円の通貨オプションでは、ドルの下落が意識されドルプット(円コール)オプションのプレミアムが上昇している。これはつまりプットのインプライドボラティリティの上昇を意味する。
その結果、ドル円のリスクリバーサルがマイナス幅を急拡大することになった。リスクリバーサルとはコールとプットのスプレッド取引であり、コールのボラティリティからプットのボラティリティを引き算したもの(ボラティリティの差分)でクォートされる。コールのボラティリティに比べて、プットのボラティリティのほうが大きく上昇すると、リスクリバーサルが低下する。もともとマイナスであったリスクリバーサルが低下するとはつまり、マイナス幅を拡大することを意味する。

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