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はじめに
昨日(2021年3月5日)、英当局FCA (Financial Conduct Authority) がLIBORの公表停止時期を正式に発表した。ISDAもそれに合わせてアナウンスとガイダンスを発表している。
重要なこととして、今回のアナウンスは、pre-cessation trigger(公表停止前トリガー)に該当し、全通貨・全テナーのLiborについて、フォールバックスプレッドの計算期間、そしてフォールバックスプレッドの値が確定したことになる。
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Liborはまだ公表されているし、Libor参照契約はまだLiborをもとに利息額を求めている。しかし、今後Liborが公表停止されたら変動金利の条件が変わるのだが、その新しい変動金利の条件(後決め複利RFR+フォールバックスプレッド)が確定したわけである。
各通貨、各テナーの公表停止時期
FCAの発表をざっくりまとめると次のようになる。
- 2021年12末を最後に公表停止:
- USD:1W, 2M
- JPY:S/N, 1W, 2M, 12M
- GBP:O/N, 1W, 2M, 12M
- EUR:全てのテナー
- CHF:全てのテナー
- 2021年12末を最後に公表停止されるが、
Synthetic Liborが公表される可能性あり:- JPY:1M, 3M, 6M:
Synthetic Liborの公表は2022年12末までの1年間を検討
- GBP:1M, 3M, 6M:
Synthetic Liborの公表終了日は未定
- JPY:1M, 3M, 6M:
- 2023年6末を最後に公表停止:
- USD:O/N, 12M
- 2023年6末を最後に公表停止されるが、
Synthetic Liborが公表される可能性あり:- USD:1M, 3M, 6M:
Synthetic Liborの公表終了日は未定
- USD:1M, 3M, 6M:
ポイントは以下の通り。
- USDだけは2023年6末まで、1年半だけ廃止が延期された(事前のうわさ通り)
- JPYとGBPのメジャーなテナーは、Libor自体は2021年末で公表停止されるが、その後もシンセティックLiborが公表されるかもしれない
- JPYのシンセティックLiborは仮に公表されたとしても1年間の予定
ではシンセティックLiborとは何なのか。
その前にまずタフ・レガシー契約について見ていく。
タフレガシー契約とは
契約上の参照金利をLIBORからRFRに移行するのが困難な契約のことである。
困難な原因としては次のようなものがある。
- 取引当事者が多く、合意形成を実現するのが難しい(社債など)
- 契約が複雑で文言修正が難航する
- 標準化されていないテーラーメイドな契約の場合
- 仕組み取引にLibor参照取引が組み込まれている場合
- 顧客(中小金融機関、事業法人、個人など)が、
- Libor廃止問題に精通しておらず、啓蒙・教育が必要
- そもそもRFR移行に対応できるだけのリソースを確保できない
これらについては、期限までにRFRへ移行するのが現実的に困難であるため、例外対応が必要との声があがっていた。
なお、デリバティブについてはISDAのフォールバック・プロトコルに批准していれば、自動的にRFR移行できるため、そこまで深刻に考えられていない。しかしISDAプロトコルに批准していない場合は、市場の一斉フォールバックの動きに取り残されるため、その場合もタフ・レガシー問題が生じることになる。
シンセティックLIBORとは
Synthetic Liborは、「Synthetic」が合成とか人工という意味であり、「正式なLiborではないが、人工的に作られたLiborのような金利の参考値」のことである。合成Liborなどとも呼ぶ。
重要な点は、Liborと似た特徴を持つが、あくまで参考値であり、Liborではない、ということだ。
シンセティックLiborがどのように計算されるかについては、現状の議論では、
ターム物RFR+スプレッド
と計算されるようだが、詳細はまだはっきりしない。
ここで、
- ターム物RFRは、フォワードルッキングな先決めレートのこと
- スプレッドは、フォールバックスプレッドをもとに設定される見通し
である。
シンセティックLiborは、Liborと同じ特徴を有していないといけないので、
- 後決め金利ではなく先決め金利
- 銀行クレジットのスプレッドが上乗せされる
ということになる。
参考文献
Interest Rate Swaps and Their Derivatives: A Practitioner’s Guide (Wiley Finance Book 510) (English Edition) Interest Rate Derivatives Explained: Volume 1: Products and Markets (Financial Engineering Explained) (English Edition)あわせて読みたい
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