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債券のデュレーションとは:2つの意味
債券数理の分野で必ず出てくる用語にデュレーションがある。証券アナリスト資格の試験でも頻出のトピックである。
デュレーションには様々な種類があり、頭の中がごちゃごちゃになってしまう学習者が多い。まず押さえておくべきことは、デュレーションには以下2つの意味があり、まずはこの2つを区別することである。
- 債券投資額の平均回収期間:
投資した金額がざっくり何年後に返ってくるか
例:マコーレー・デュレーションなど - 金利変化に対する債券価格の(一次)感応度:
例えば金利が0.01%動いたら債券価格はざっくり何%動くか
例:修正デュレーションなど
これら2つは違う発想から出てきた概念だが、実は2つのデュレーションは計算式が似ており、したがって、結果の数値も近くなることが多い。
すなわち、平均回収期間が長い債券(ざっくり言うと満期が長い債券)ほど、同じ金利変化幅でも債券価格が大きく動く(債券価格の金利感応度が大きい)ということになる。
直感的には、満期が長い債券ほど、元本償還を現在価値に割り引く際、金利の影響を大きく受けるので、金利に対する感応度が大きい、というのは何となくイメージできるだろう。
1.債券投資額の平均回収期間
一つ目の意味は債券投資額の平均回収期間である。
平均回収期間の意味
「平均回収期間」の意味を簡単な例で確認する。
まず最も簡単な例は割引債の場合である。割引債は、金利支払いがなく、満期に元本が返ってくるだけである。そもそもキャッシュフローが満期の一回しかないので、投資額の平均回収期間は満期に一致する。満期1年の割引債なら平均回収期間は1年となる。1年後まではお金が全く返ってこず、1年後にまとめて返ってくる。
次の例は利付債の場合である。利付債は、金利が半年ごとなど定期的に支払われ、満期に元本が返ってくる。割引債とは違い、金利支払いがあるので、満期以外のタイミングでもキャッシュフローが発生する。
例えば年2回利払、金利2%、満期1年、元本100の利付債の場合、金利=1(=100*2%/2)を6カ月後と12カ月後で計2回受け取り、満期に100が返ってくる。よって合計すると、6カ月後に1が返ってきて、12カ月後に101が返ってくる。
つまり、返ってくる金額のうち、大半は満期である12カ月後に返ってくるが、わずかに1だけ6カ月後に返ってくる。よって平均回収期間はほぼ満期(=1年)だが、6カ月後に若干の金額が金利として返ってくるので、満期(=1年)よりは若干短くなる。
マコーレー・デュレーション
この平均回収期間の発想で作られたデュレーションがマコーレー・デュレーションである。簡単のために年一回利払、年一回複利とすると、マコーレー・デュレーションの計算方法は以下の通り。
$$\sum_{i=1}^{n}t_i \frac{CF_i / (1+r)^i}{P}$$
ただし、
\(n\)は利払回数
\(t_i\)はキャッシュフロー発生までの期間(を年単位に換算したもの)
\(CF_i\)は\(i\)回目のキャッシュフロー(最終回は元本を含む)
\(r\)は利回り(割引金利)
\(P\)は債券価格
である。この計算では、キャッシュフロー発生までの期間を、キャッシュフローの時価で重み付けして平均をとっている(加重平均している)ことになる。
重み付けしているウェイトを
$$w_i = \frac{CF_i / (1+r)^i}{P}$$
とおく。このウェイトは、キャッシュフロー時価合計(=\(P\))のうち、\(i\)番目のキャッシュフロー時価が占める割合を表している。
ここで、債券価格は将来キャッシュフローの割引現在価値の合計だから、
$$P = \sum_{i=1}^{n} \frac{CF_i}{(1+r)^i} = \sum_{i=1}^{n}(w_i P) = P\sum_{i=1}^{n}(w_i)$$
となる。したがって、
$$ \sum_{i=1}^{n} w_i = 1$$
であるから、ウェイトの合計はきちんと1(=100%)になっていることがわかる。
2.金利に対する債券価格の一次感応度
デュレーションの2つ目の意味は債券価格の金利感応度である。
修正デュレーション
修正デュレーションは以下のように定義される。
$$D = -\frac{\frac{\mathrm{d} P}{\mathrm{d} r}}{P}$$
債券価格を利回りで一階微分して、債券価格で割ったものである。一階微分の符号はマイナス(つまり利回りが上がると債券価格は逆に下がる)なので、デュレーション自体の符号をプラスにするために、マイナスをつけている。
ざっくり書くと、債券価格の変化は
$$ \Delta P \sim \Delta r \frac{\mathrm{d} P}{\mathrm{d} r} $$
と一階微分で近似できるから、両辺を\(P\)で割れば、
$$ \frac{\Delta P}{P} \sim \Delta r \frac{\frac{\mathrm{d} P}{\mathrm{d} r}}{P} = -\Delta r D $$
となり、債券価格の変化率(変化幅ではない)は修正デュレーションを用いて書ける。
例えば、修正デュレーションが1.5の場合、金利が(絶対差分で)1%だけ動くと(\(\Delta r = 0.01\))、債券価格の変化率は近似的に、1.5 * 1% = 1.5%と求められる。ただし一階微分しか使っていないので、あくまで近似である。
債券価格の二次感応度(二階微分)はコンベクシティと呼ばれ、デュレーションに加えてコンベクシティも考慮したほうが、債券価格変化の近似精度は上がる。
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