CDSスプレッドと社債スプレッドは、いろいろと仮定を置くと理論的にはほぼ同じものとみなせるが、実際の市場での値はかなり違う。
直感的に(おおざっぱに)考えてみよう。
・社債を買う
と同時に
・その社債を参照するCDSのプロテクションを買う
このポジションは、社債のデフォルトによる損失はCDSでヘッジできているため、デフォルトリスクのない債券の買いとみなせる。
無裁定の仮定を置けば、このポジションの収益率は無リスク金利に等しい。
したがって、
CDSスプレッド
=社債イールド-無リスク金利
=社債スプレッド
となるはずである。
ここで、無リスク金利として何を選ぶかによって社債スプレッドは違ってくるが、よくあるのは以下2つの方法である。
・国債利回りからのスプレッドを社債スプレッドとする
・LIBORスワップレートからのスプレッドを社債スプレッドとする
しかし実際の市場では、CDSスプレッドと社債スプレッドの値はかなり違っている。
その要因としては以下のようなものがある。
・社債の空売りが困難
・空売りが困難であることにより社債には流動性スプレッドが混入している
・CDSと社債でデフォルト事由の定義が異なる
・社債にはよく早期償還条項などイレギュラーな条項が付いている
・CDSと違って社債のデフォルト時には金利の経過利息が支払われない
・CDSにはデフォルト発生時のデリバリーオプションがある
ここで、2点目の流動性スプレッドについては、CDSは特にシングルネームは流動性がかなり限定的であり、むしろ CDSスプレッドの方にこそ流動性スプレッドなどクレジット以外の要因があれこれ混入しているのでは、という見方もある。
また、最後のデリバリーオプションについては、発行体のデフォルト時にプロテクションの買い手が現物決済で受け渡す債務は、CDSの契約で定められている条件を満たしているものであれば何でもよい、というものである。
よってプロテクションの買い手は、条件を満たすもののうち最も安い債務を受け渡すことができる、というオプションが付与されていることになる。
その分だけスプレッドを多く払わないといけないはずであるから、これはCDSスプレッドが高くなる要因の一つである。
しかし最近では、インデックスCDSだけでなくシングルネームCDSでも、デフォルト時の決済は、上のような現物決済ではなく現金決済が主流になってきている、という話も聞く。