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リカバリーロック(リカバリースワップ)取引とは
債券のデフォルト後の回収率を固定化するのに用いる取引のこと。デフォルト前に契約で設定した固定の回収率と、デフォルト後に判明する実際の回収率を交換するのがリカバリーロックである。回収率をヘッジする目的でトレードされたり、市場参加者間で回収率を予想し合ってトレードされたりする。
債券のデフォルト可能性が非常に高まっている場合、当該債券を参照するCDS(クレジットデフォルトスワップ)の流動性が低下する。なぜならCDSはデフォルト確率に着目した取引であり、デフォルト確率が100%に近い状況ではあまり意味をなさないからだ。実際、CDSのトレード(つまりCDSスプレッドの計算)において回収率は、市場実勢と関係なく(ほぼ根拠なく)決め打ちで設定された値(日本のCDSは35%、海外のCDSは40%)が使われる。
リカバリーロックで呈示される固定レートは、回収率の市場予想(いわゆるインプライドの回収率)と解釈することもできる。
そこでCDSの代わりとして取引され始めるのがリカバリーロックである。リカバリーロックではデフォルト確率は無視して、デフォルトした場合の回収率を直接当てっこできるわけである。別名としてリカバリースワップとも呼ばれる。
リカバリーロック取引の仕組み
リカバリーロックは債券の回収率に着目した取引であり、固定支払いサイドと変動支払いサイドの間で契約を結ぶ。
- デフォルトが発生した場合、固定支払いサイドは契約上の固定レート(参照価格 / Reference Price と呼ぶ)を元本に乗じた金額を支払う
- デフォルトが発生した場合、変動支払いサイドは債券の処分時価(最終価格 / Final Price と呼ぶ)を支払う
- デフォルトが発生しなかった場合、受け払いは何もしないまま取引は終了する
変動支払いサイドが当該債券を保有していると、実際の処分時価が元本の60%減、つまり40%でしか処分できなかったとしても、固定レート50%のリカバリーロックを行っていれば、実質的に債券の回収率を50%に固定化できる。すなわち、
- 持っている債券から元本の40%を受け取る
- それをそのままリカバリーロックの固定支払いサイドに渡す
- リカバリーロックの固定支払いサイドから、元本の50%を受け取る
現物決済と現金決済
リカバリーロックの決済方法には現物決済(フィジカルセトル)と現金決済(キャッシュセトル)がある。昨今ではCDSのオークション決済が一般化していることもあり、現金決済するのが普通だろう。
- 現物決済では、
- 変動支払いサイドは債券現物を引き渡す
- 固定支払いサイドは元本に固定レートを乗じた金額を支払う
- 現金決済では、債券現物を実際に引き渡すのではなく、差金決済を行う。つまり、
- 債券の処分レート>固定レートとなった場合は、
変動支払いサイドが 元本×(処分レート-固定レート)を支払う - 債券の処分レート<固定レートとなった場合は、
固定支払いサイドが 元本×(固定レート-処分レート)を支払う
- 債券の処分レート>固定レートとなった場合は、
注意点
リカバリースワップは名前に「スワップ」が付いているが、金利スワップのように定期的に何回もキャッシュフローを交換することはなく、発生するキャッシュフローは一回きりである。
また、実際にデフォルトが発生しない限り、何もキャッシュフローは生じない、という点に注意。デフォルトしなかった場合、リカバリーロックは未使用のまま取引終了となる。
参考文献
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