はじめに
CDSとはCredit Default Swap(クレジットデフォルトスワップ)の略であり、クレジットデリバティブでは最も基本的でメジャーな商品である。
スワップだからサイド (Legという) が2つある。Premium LegとProtection Legである。Protectionとは「保険」というようなイメージで押さえておけばよい。
・Premium Legは、固定クーポンを満期まで定期的に支払う。ただし満期までの途中でCDSが参照する債券にデフォルトが発生したらそれ以降は支払わない。
・Protection Legは、デフォルトが起こるまでは何も支払わず、Premium Legの固定クーポンを受け取り続ける。デフォルトが発生したらその損失を肩代わりする(Premium Legの支払いサイドに、損失額を支払う)
プロテクションロングの場合、これは保険を買っているサイドであり、
・Premium Legの支払い
・Protection Legの受け取り
になる。
逆に、プロテクションショートの場合、これは保険を売っているサイドであり、
・Premium Legの受け取り
・Protection Legの支払い
になる。
時価評価
このスワップを時価評価する方法は、金利スワップや通貨スワップなど、通常のスワップの場合と同じ考え方である。すなわち、
(1)マーケットデータからパラメーターを逆算する(キャリブレーション)
(2)パラメーターを使って時価評価
金利スワップでいうところのパラメーターはディスカウントファクター(DF)やゼロレートだったが、CDSのパラメーターはハザードレートである。
なのでまずは(1)でマーケットデータ、つまり満期ごとのCDSスプレッドからハザードレートのカーブを逆算する。次に、そのハザードレートをインプットとして使い時価評価する。
さらに注意点として、CDSの時価評価にも当然ながらイールドカーブが必要になる。CDSに変動金利クーポンはないため、プロジェクションカーブは不要であり、将来キャッシュフローの割引に使うディスカウントカーブのみでよい。
ハザードレートのカーブ生成
まずはキャリブレーションの段階として、ハザードレートのカーブを生成する必要がある。これはつまり、マーケットで観測されるCDSスプレッドと整合的になるようにハザードレートのカーブを逆算することである。
その際、マーケットで観測できる満期とCDSスプレッドを持つCDSの時価がゼロになるように逆算する。すなわちハザードレートのカーブ生成という準備段階ですでに、CDSの時価評価と同じようなことをしないといけない、ということだ。
CDSの時価評価は、2つのLegの時価をネッティングする。
Premium Legの時価+Protection Legの時価
既に書いたように、Premium Legの受け取りサイドであればProtection Legは支払いサイドになっており、逆は逆なので、時価はどちらか片方のLegがプラスで、もう片方のLegがマイナスになる。
マーケットで観測できるCDSスプレッドは、Premium Legの固定クーポンレートとして用いる。
ハザードレートは、参照企業のデフォルト確率(したがって生存確率)に関係するものであり、これはPremium LegとProtection Legの両方に用いる。なぜなら、
・Premium Legは、参照企業がデフォルトしたら、クーポンの支払いが発生しないので、累積の生存確率を乗じる必要がある
・Protection Legは、参照企業がデフォルトしないと、損失に対応する支払いが発生しないので、その区間におけるデフォルト確率を乗じる必要がある
からである。
Premium Legで発生するキャッシュフロー金額は固定クーポンなので明らかだが、Protection Legはどうするか。Protection Legはデフォルト発生時の損失額がキャッシュフローになるが、この金額はオークションを経て決まるため事前にはわからない。このため、CDSスプレッドを相手に提示する際のコンベンションとしては、事前に定めた回収率に基づいてCDSスプレッドを求める、ということになっている。事前に定めた回収率とは、地域や参照債券の優先・劣後などでコンベンションが決まっている。以下の記事を参照。
CDSのリカバリーレートのコンベンション | Quant College
ハザードレートを用いてキャッシュフローの期待値を求めたら、あとはディスカウントカーブで割り引くだけである。
ここで注意として、ハザードレートのカーブを逆算する際に用いるディスカウントカーブは、評価対象の担保通貨を参照するのではなく、CDSスプレッドのマーケットコンベンションに従う必要がある。すなわち、ISDAの定めるLIBORカーブをディスカウントカーブとして用いる。OISではない点に注意。
CDSのディスカウントカーブ | Quant College
ハザードレートをインプットすると、Premium Legの時価とProtection Legの時価が求まる。それらをネッティングするとCDSの時価が出る。これがゼロになるようにハザードレートを逆算する。
ハザードレートのカーブには、マーケットでCDSスプレッドを取得できる満期の間では定数とする、つまりPiecewise Constantと仮定する。
ハザードレートを用いて時価評価
いったんハザードレートのカーブが得られれば、それをインプットしてPremium LegとProtection Legの時価を求めるだけである。
ここで注意として、時価評価の際に用いるディスカウントカーブは、ISDAの定めるLIBORカーブではなく、評価対象取引の担保通貨に対応するディスカウントカーブを用いる。キャッシュフローがドル建てで発生するCDSであれば、円担保なら円担保ドルディスカウントカーブを用いる。するとこの場合、担保通貨とキャッシュフロー通貨が異なるので、通貨ベーシスを適切な形で割引金利に反映しないといけないことに注意。
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