アセットスワップとリパッケージ債の関係

アセットスワップとは

アセットスワップとは、債券のクーポンを(変動金利)+(スプレッド)の形に変換するスワップである。この(スプレッド)をアセットスワップスプレッドという。これは債券の信用リスクを、変動金利に乗せるスプレッドの形にしたものである。

債券はたいてい固定クーポンだが、これを変動クーポンに変換するスワップである。イメージとしては、アセットスワップによって固定利付債が変動利付債に変換される。

SPCスキームによるリパッケージ債

アセットスワップは仕組債、特にリパッケージ債との関連でもよく出てくる。

昔に発行された国債などの債券は、時間経過によって足元ではあまり魅力的ではないクーポンになっていることも多い。このとき国債の投資家は、証券会社と、国債のクーポンと仕組クーポンを交換するアセットスワップを行い、魅力的な仕組クーポンを受け取る形に変換できる。つまり自分が持っている国債の固定クーポンを証券会社に渡す代わりに、複雑な式で決まる変動クーポンを証券会社からもらう。

しかしながら、アセットスワップは生のデリバティブ(生デリバ)であり、デリバティブに慣れていないバイサイドや事業法人にとっては敷居が高い。そもそも生デリバが社内ルール的にできなくなっている事業法人もあるだろう。また、生デリバだと時価評価が必須になり、損失を垂れ流すリスクもある。

これらのことから、投資家サイドとしては、生デリバではなく債券の形で投資したいと考えるわけである。デリバを内在していても、債券の形になっていれば、投資しやすいのだろう。

そのために、アセットスワップの代わりとして用いられるのがSPCを使ったリパッケージスキーム(SPCスキーム)である。

以前にも書いたが、取引の流れは以下の通り。

  • 投資家は国債をSPCに預ける
  • SPCはその国債クーポンと仕組クーポンを交換するアセットスワップを、証券会社と行う
  • 入ってきた仕組クーポンを、SPCが新しく発行したリパッケージ債のクーポンとして投資家に払う

これにより、投資家は手持ちの国債を預けるだけで、デリバティブを行うことなく、仕組クーポンを受け取れる。要するに、投資家はSPCを自分の身代わりとして立てて、自分の代わりに証券会社とのデリバティブをやってもらうわけである。

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