CDSからローン保険へ

ローンのポートフォリオをかかえる銀行では最近、とりたくない信用リスクをヘッジする手段として、CDSではなくローン保険を選ぶことが増えてきている、との記事がRiskに出ていた。

信用リスクのヘッジ手段としてはかつて、CDSが一般的だったが、金融危機後の規制もあり、流動性がかなり低下している。

 
特にシングルネームCDSは、仮にそれで信用リスクをヘッジしていたとしても、バーゼル規制のCVA資本の軽減につながらないなど、ひどい扱いを受けてきた。資本軽減につながるのはインデックスCDSのみであった。
このようなこともあり、せっかくヘッジしてもシングルネームCDSだと資本軽減につながらない、ということで、シングルネームCDSの取引量が激減したわけである。
 
CDSはあくまで債券のデフォルトが対象であり、ローンではない。
このため、自分が持っているローンとぴったり合う債券を参照するCDSはないため、ベーシスリスクが発生する。
 
ベーシスリスクは、
 
・ローンがデフォルトしたが、それに対応する債券はデフォルトしていない場合
 
・債券が実質的にデフォルトしているが、CDSではデフォルト認定されず支払いが受けられない場合
 
に発生する。
つまり、ヘッジが不完全なわけである。
 
このようなCDSに比べると、ローン保険は、
・持っているローンに対して直接紐付けて契約を結ぶため、ベーシスリスクがない。
・CDSと違ってデリバティブではなく、時価評価が不要であり、損益にはねない。
 
さらに重要なのは、欧州の資本規制では、ローン保険を用いた場合、ローンの借り手のデフォルト確率の代わりに、ローン保険の保険会社のデフォルト確率を用いることができるらしい。
たいてい保険会社の方がローンの借り手よりも信用力が高いため、資本軽減につながるわけである。これは利用しない手はない。
 
このようなメリットがある一方で、デメリットとしては、個別のローンに紐付けるため、個別性が高く、契約が標準化されていない。
これにより、ドキュメンテーションの詳細を保険会社と合意するのに時間がかかる。
保険会社としても、対象となる個別のローンの内容について透明化してもらわないと契約に合意できないため、銀行と保険会社との間で交渉のやりとりが発生する。
これは契約がISDAにより標準化されているCDSとは全く異なり、非効率で手間がかかるといえるだろう。

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