【金利の期間構造モデル】平均回帰パラメーターのキャリブレーション方法【ハルホワイトモデル】

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わかりやすい解説

ハルホワイトモデルなどの金利モデルや、確率ボラティリティモデルに出てくる、平均回帰の強さを表すパラメーターには、どのように値を設定すればいいのか。よくギリシャ文字Kappa、κで表されている。

そもそも平均回帰とは何なのか。平たく言うと、
・金利が長期的な平均水準より上にいると下がりやすくなる
・金利が長期的な平均水準より下にいると上がりやすくなる
というもので、金利が上がり続けたり下がり続けたりしない、という性質のことをいう。

金利の平均回帰パラメーターは、
・期間の異なる金利間の相関
あるいは
・金利の自己相関
と関連がある、とよく文献に書いてある。

これはつまり、
・平均回帰性が強いと金利間の相関は低くなる
・平均回帰性が弱いと金利間の相関は高くなる
ということを指している。

この意味は平たく言えば、平均回帰性が強いと、
・金利が上がると、平均水準に強く引き戻されるので、その後下がりやすくなる
・金利が下がると、平均水準に強く引き戻されるので、その後上がりやすくなる
わけだから、金利間の相関が下がる、ということだ。

よって結局のところ、平均回帰パラメーターを市場にキャリブレーションするには、期間の異なる金利間の相関に合わせないといけない、ということになる。

しかしながら、金利間の相関は一般的に市場から取得できない。このため、実務では平均回帰パラメーターはたいてい、
・トレーダー主観で5%など適当な値で決め打ちする
・Totemのバミューダンスワップション価格に合うように調整する
のどちらかで設定されている。

より高度なキャリブレーション方法としては、ATMスワップションマトリックスに合わせる、というものがある。

ただしこの場合は、
・Liborのボラティリティ
と、
・Libor間の相関
に、何らかの関数形を仮定することになる。
よくあるのはRebonatoのパラメタライゼーションとよばれるもので、指数関数を用いた簡単な形を仮定する。

次に、スワップションボラティリティを、LiborのボラティリティとLibor間の相関を用いて近似する。これはRebonatoの公式と呼ばれる。その心は、
・スワップレートはひとつひとつのLiborを平均してならしたものである
・よって、スワップレートはLiborたちの加重平均で表せる
・つまり、スワップレートはLiborたちのポートフォリオとみなせる
・よって、スワップレートのボラティリティは、それを構成するLiborたちのボラティリティと、Liborたちの相関で近似できる
というものだ。

要するに、
・スワップションは、Liborのバスケットオプションである
・よって、スワップションマトリックスには、それらの構成要素であるLiborの相関が織り込まれている
と考えるのである。

これにより、スワップションマトリックスに織り込まれている金利間の相関が出てくる。あとは、平均回帰パラメーターと金利間相関の関係式をもとに、平均回帰パラメーターを逆算することになる。

参考文献:より深く学びたい方は

体験デリバティブ マルチカーブのもとでわかるハル・ホワイト・モデル

基礎からわかるLIBORマーケット・モデルの実務(CD-ROM付き)

XVAモデルの理論と実務

Interest Rate Modeling. Volume 2: Term Structure Models by Leif B. G. Andersen Vladimir V. Piterbarg(2010-08-17)

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