ドル円の為替フォワードから作る2種類のディスカウントファクター

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為替フォワードからディスカウントファクターを作る2つの方法

市場では為替スワップポイントがクォートされており、それをコンベンションに従ってスケーリングし、為替スポットに足せば、市場実勢の為替フォワードが得られる。

この為替フォワードからディスカウントファクター(DF)を作るとき、やり方は1つには定まらない。ここではドル円を例に考える。

  • 方法⑴
    ドルLibor3Mカーブを補間して得たドルのDFをインプットにして
    為替フォワードからのDFを逆算する
  • 方法⑵
    円Libor6Mカーブを補間して得たのDFをインプットにして
    為替フォワードからドルのDFを逆算する

2つの方法は、インプットとアウトプットの通貨が逆である。金融機関によって方法⑴のところもあれば、方法⑵のところもある。この違いは何なのか。

2つの方法の違い

方法⑴と方法⑵の違いは次の通り。

  • 方法⑴は、ドルLibor3Mファンディングの円の割引金利
    つまり米銀目線の円の借入金利を求めていることになる。
  • 方法⑵は、円Libor6Mファンディングのドルの割引金利
    つまり邦銀目線のドルの借入金利を求めていることになる。

方法⑴について、ドルのほうは、Libor3MフラットのDFを用いているため、通貨ベーシスの情報が織り込まれていない。一方で、円のほうは、通貨ベーシスの情報が織り込まれている為替フォワードからDFを逆算するため、結果的に通貨ベーシスが円のDFに織り込まれる。この円金利は、ドルをLibor3Mフラットで借り入れて、そのドルを為替フォワードで円転した場合の円金利だから、ドル調達目線(米国の銀行目線)での円金利といえる。

逆に、方法⑵について、円のほうは、Libor6MフラットのDFを用いているため、通貨ベーシスの情報が織り込まれていない。一方で、ドルのほうは、通貨ベーシスの情報が織り込まれている為替フォワードからDFを逆算するため、結果的に通貨ベーシスがドルのDFに織り込まれる。このドル金利は、円をLibor6Mフラットで借り入れて、その円を為替フォワードでドル転した場合のドル金利だから、円調達目線(日本の銀行目線)でのドル金利といえる。

通貨ベーシスは現在マイナスだが、これはつまり、

  • ドルを元手に円を借りる金利は安くしてもらえる
    ⇒ドル調達ベースの円金利はDFの割引が弱くなる
     (DFの値が1より大きくなることが多い)
  • 円を元手にドルを借りる金利は高くされてしまう
    ⇒円調達ベースのドル金利はDFの割引が強くなる
     (DFの値が1よりかなり小さくなる)

という状態を示している。

為替フォワードにはこの通貨ベーシスに対応する情報が織り込まれているため、

  • 方法⑴で出した円のDFは、普通に円Libor6Mカーブから直接得られるDFよりも、割引が弱くなる
  • 方法⑵で出したドルのDFは、普通にドルLibor3Mカーブから直接得られるDFよりも、割引が強くなる

ということになる。

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