コーラブル商品とは、早期解約条項が付いている商品である。
早期解約されると、それ以降のキャッシュフローの受け払いはなくなる。
早期解約権は金融機関サイドに付与されるものが多い。
早期解約できるタイミングは、1回のみのものもあれば、複数回あるものもある。
早期解約できるタイミングが、
・1回のものをワンタイムコーラブル
・複数あるものをマルチコーラブル
ということもある。
ここではマルチコーラブルスワップの評価を考える。
コーラブルスワップの評価は、
・コーラブルなしの普通のスワップ
・そのスワップとは受け払いが逆方向のスワップを原資産とするスワップション
の2つに分解して評価する。
金融機関が早期解約の権利を行使すると、
・逆方向のスワップがスタートするので、
・もともとのスワップと受け払いが完全に相殺される。
キャッシュフローがネットでゼロになるので、これをもって解約されたことになる。
早期解約される可能性のある顧客から見ると、金融機関に解約権を売っているので、スワップションの時価はマイナスになる。
したがってマルチコーラブルスワップの評価は、
・コーラブルなしの普通のスワップ
・それとは逆方向のスワップを原資産とするバミューダンスワップション
に分けて評価し、
これら2つの時価の合計をマルチコーラブルスワップの時価とする。
しかし重要なのは、これら2つは評価の仕方が全く異なる、ということだ。
・コーラブルなしのスワップは、インルドカーブを補間するだけで、モデルなしで評価できる。
・一方で、バミューダンスワップションの評価には金利モデルが必要であり、PDEやツリーなどで数値計算することになる。
重要なことだが、バミューダンスワップション評価の副産物として、コーラブルなしのスワップの時価も、数値計算の中で得られる。
ここで問題になるのは、コーラブルなしのスワップを
⑴モデルなしで普通に評価するか
⑵スワップションの評価モデルの副産物として得られる時価をそのまま評価として用いるか
どっちにするか、ということである。
実務ではどちらのケースも見られるが、けっこう⑴が多い気がする。
その理由は、⑵はモデルや数値計算に起因する誤差が含まれるので正確ではなく、⑴からそれなりにズレることが多いからである。
もちろん、⑵の評価が⑴にかなり近くなることもあるが、そのためには、
・モデルがマーケットにきちんとフィッティングされていること
・数値計算の設定を厳しくして、誤差を小さく抑えること
などが必要である。
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