【感想あり】ボラティリティスマイルの勉強におすすめの本4選 (難易度順)【デリバティブ】

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はじめに

今回はトレーダーやクオンツ向けに、ボラティリティスマイルと、それを考慮したオプションプライシングを学ぶのにおすすめの本を紹介する。

ボラティリティスマイルについては以下の記事を参照。
ボラティリティスマイル/スキューとは:意味すること/発生する原因・理由 | Quant College

なお、確率解析やBlack-Scholesモデルなどオプションプライシングの基礎を学んだ人向けであるため、それらをまだ学んでいない場合は、以下の記事におすすめの本を掲載しているので、先にそちらを確認してほしい。

以下、だいたいの難易度が易しいものから難しいものの順に説明する。

[1](初級レベル)

Smile Pricing Explained (Financial Engineering Explained) (English Edition)

  • 比較的新しい本であり、確率解析からスマイルモデルまで、かなり幅広い内容をカバーしていながら、他の本よりもコンパクトにまとまっている良書
  • 数式の難易度は他の本と比べるとそれほど高くない。数式の意味を言葉で詳しく書いてくれている印象である。
  • 内容は、確率解析の基礎、マルチンゲールプライシング、BSモデルに始まり、バリアオプションなどのエキゾチックオプション、ローカルボラティリティモデル、確率ボラティリティモデル、確率ローカルボラティリティモデルまでカバーしている。
  • その他、モンテカルロやPDEなどの数値解法、バリアンススワップ、マルチアセット商品のプライシング(ローカルコリレーションのさわりの部分など)も載っている。
  • シュリーブ2分冊の2冊目(連続時間モデル)の次に読む本としてもよいが、これから学ぶ人にとっては、シュリーブの代わりとしてこの本を読むのが良いかもしれない。シュリーブと比べてこの本は、基礎理論をきちんと理解するというよりは、実務ですぐ役立つような内容になっている

[2](初級~中級レベル)Derman本

The Volatility Smile (Wiley Finance)

  • これも比較的新しい本だが、クオンツ業界の大御所であるDermanらが書いたテキスト。あのDermanがスマイルについてこう書いているのであればそれが正しいんだろう、と思ってしまう。
  • 特徴は、
    • グラフなどで直感的に説明されている
    • ジョンハル本のように数値例を使って説明されている
  • ヘッジ戦略や取引コストがP&Lに与える影響など、トレーダーにとっても非常に有益な内容が詰まっており、クオンツのみならずトレーダーにもおすすめ。
  • その他の内容としては、スマイルモデルで生成されるスマイルが満たすべき無裁定条件、ローカルボラティリティモデル、スマイルのダイナミクス、確率ボラティリティモデル、ジャンププロセスなど
  • 確率ボラティリティについては、原資産の相関やMean Reversionがスマイルに与える影響なども解説されている
  • けっこう分厚い。24章まであり、本編は400ページくらい。

[3](中級レベル)Gatheral本

The Volatility Surface: A Practitioner’s Guide (Wiley Finance)

  • 2006年の本で少し古いが有名な本である。SVIなどのスマイルモデルとボラティリティデリバティブの研究で有名なGatheralが書いた本で、主にエクイティ(株式)デリバティブを念頭に書かれている。
  • 内容は、モデルについては、ローカルボラティリティモデル、Hestonモデル、ジャンププロセスについて詳しく書かれている
  • 式展開を追うには確率解析と数理ファイナンスの基礎がある程度身に付いていないといけない
  • 商品については、本の終盤でバリアオプション、クリケットオプション、ボラティリティデリバティブ(バリアンススワップなど)について詳しく書かれている。
  • シュリーブの連続時間モデルや、上記の[1] Smile Pricing Explainedあたりを読んでから、個別のモデルや商品について式展開を追っていきたいような人におすすめ

[4](中級~上級レベル)Rebonato本

Volatility and Correlation: The Perfect Hedger and the Fox (The Wiley Finance Series)

  • これも少し古いが有名な本である。LIBORマーケットモデルのキャリブレーションなどで有名なRebonatoが書いた本のひとつ。
  • 特徴は、為替やエクイティに加え、金利モデルについても詳しく書かれており、これ一冊で何でも載っている点である。
  • 特に金利の期間構造モデルにスマイルを反映する方法など、発展的な内容が詳しく書かれている。
  • イメージとしては、上記のDerman本 [2] The Volatility Smile に金利モデルを加えて、個別の内容についてさらに掘り下げたような本。
  • 何でも載っている反面、約800ページとかなり分厚い鈍器なので注意。

まとめ

  • 今回は、ボラティリティスマイルを考慮したオプション評価を学ぶのにおすすめの本を紹介した。
  • ボラティリティスマイルを考慮したオプション評価というのは、いまや邦銀でも当たり前のように行われているので、デリバティブ評価に関与する人は必ず通る道である。
  • 初めの1冊としては [1] Smile Pricing Explained がいいだろう。この本に対応する和書が今のところ出てきていないのが残念。
  • 腰を据えて学びたい人には [2] The Volatility Smile がいいだろう。分厚い本だが、直感的な説明がたくさん載っていて理解がしやすい。

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